第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午後86~90】

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問題86 肩甲骨骨折で正しいのはどれか。

1.骨体部骨折では縦骨折が多い。
2.肩峰骨折では著しく転位する。
3.上角骨折では上外方に転位する。
4.下角骨折では前外上方に転位する。

答え.4

解説
1.× 骨体部骨折では、「縦骨折」ではなく横骨折が多い。
横骨折とは、骨折線が骨の長軸方向に対してほぼ垂直に入る骨折のことである。縦骨折とは、骨の長軸に並行に骨折線が入っているものである。

2.× 肩峰骨折では、「著しい転位」はしにくい
なぜなら、肩峰は、周囲の筋肉によって安定しているため。肩峰骨折の症状として、症状限局性圧痛、呼吸痛上腕の挙上、特に外転時に疼痛がみられるが、著明な転位はない。

3.× 上角骨折では、「上外方」ではなく上内方に転位する。
なぜなら、肩甲挙筋が働くため。【起始】第1~(3)4頸椎の横突起後結節、【停止】肩甲骨の上角と内側縁の上部、【作用】肩甲骨を内上方に引く、【神経】頸神経叢の枝と肩甲背神経である。

4.〇 正しい。下角骨折では前外上方に転位する
なぜなら、大円筋が働くため。【起始】肩甲骨の下角部、棘下筋膜下部外面、【停止】上腕骨の小結節稜、【作用】肩関節内転、内旋、伸展、【神経】肩甲下神経である。

 

 

 

 

 

問題87 コーレス(Colles)骨折後に疼痛が残存する要因でないのはどれか。

1.長母指伸筋腱断裂
2.尺骨茎状突起偽関節
3.遠位橈尺関節不全脱臼
4.三角線維軟骨複合体損傷

答え.1

解説

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

1.× 長母指伸筋腱断裂は、コーレス(Colles)骨折後に疼痛が残存する要因でない。
長母指伸筋腱断裂とは、コーレス骨折後、しばらくして、親指の第一関節をのばす腱(長母指伸筋腱)が切れてしまい、親指が伸ばせなくなる事である。痛みがないことも多く、「モノがつまみにくい」「親指をひっかけてしまう」などの症状を訴える。

2.〇 尺骨茎状突起偽関節
厳密にいうと、コーレス骨折は、尺骨茎状突起の骨折とは異なるものである。ただし、同時に尺骨茎状突起の骨折が発生することがあり、併発していた場合は、コーレス骨折後に疼痛が残存する要因として考える必要がある。

3.〇 遠位橈尺関節不全脱臼
なぜなら、コーレス骨折は橈骨遠位端の骨折で、遠位橈尺関節の位置や機能に影響を及ぼす可能性が高いため。つまり、コーレス骨折後、遠位橈尺関節が不完全に脱臼したまま治癒することがある。

4.〇 三角線維軟骨複合体損傷
三角繊維軟骨複合体とは、遠位橈尺関節を安定化させている支持組織である。遠位橈尺関節は手関節に隣接して存在し、肘関節に隣接する近位橈尺関節と共に前腕の回内外運動を行う。遠位橈尺関節の安定性と衝撃吸収を担うため、三角線維軟骨複合体損傷は、疼痛や機能障害の原因となる。

 

 

 

 

 

問題88 骨折で血尿が生じやすいのはどれか。

1.尾骨
2.恥骨
3.坐骨
4.仙骨

答え.2

解説

血尿とは?

血尿とは、尿に血液が混ざっている状態を指す。主な原因として、悪性腫瘍や結石、膀胱炎などの炎症、腎臓の内科的な病気などが考えられる。

1.3~4.× 尾骨/坐骨/仙骨は、血尿は起こりにくい。
なぜなら、骨盤内の臓器や尿管との距離が遠いため。

2.〇 恥骨は、骨折で血尿が生じやすい。
なぜなら、恥骨は骨盤の一部であり、骨盤内の臓器や血管に近いため。恥骨の近くにある尿道や膀胱が損傷を受けると、血尿が発生する。

 

 

 

 

 

問題89 有痛性分裂膝蓋骨で正しいのはどれか。

1.中高年に多い。
2.安静時に痛みがある。
3.関節水症がみられる。
4.大腿四頭筋ストレッチが有効である。

答え.4

解説

分裂膝蓋骨とは?

分裂膝蓋骨とは、膝蓋骨が2つ以上に分かれている状態のことをいう。10代のスポーツをしている子に多く、症状が出ない場合もある。激しいスポーツ動作などをきっかけに分裂した箇所にストレスが加わることで痛みが出現する。症状が出ている場合(痛みが出ている場合)を有痛性と分類される。有痛性分裂膝蓋骨の症状は、膝蓋骨の割れた分裂部に炎症が起き、ズキズキした痛みを伴う。膝の曲げ伸ばしにはお皿が押し付けられるような力や、大腿四頭筋の牽引力が加わり、痛みが起こり、ジャンプなど運動強度が増すと痛みが増す。

1.× 「中高年」ではなく若年層に多い。
10代のスポーツをしている子に多い。

2.〇 正しい。安静時に痛みがある
なぜなら、膝蓋骨の割れた分裂部に炎症が起こるため。ズキズキした痛みを伴う。

3.× 関節水症はみられにくい
関節水症とは、関節内にある「関節液(滑液)」の量が異常に増えてたまってしまう病状である。いわゆる膝に水がたまる状態のことをさす。原因は、加齢に伴う骨の老化、膝の使い過ぎやケガなどによる強い負荷、変形性膝関節症による骨や軟骨の破壊や変形、関節リウマチや痛風などによる炎症等があげられる。

4.× 大腿四頭筋ストレッチが、「有効である」とはいえない
なぜなら、大腿四頭筋が膝蓋骨に付着しているため、ストレッチによりさらに膝蓋骨にストレスが加わり、炎症症状が増悪する可能性が高いため。

 

 

 

 

 

問題90 下腿骨骨幹部骨折で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.好発部位は脛骨中央部である。
2.横骨折は前方凸変形となりやすい。
3.中下1/3の骨折では偽関節になりやすい。
4.斜骨折の骨折線は前内方から後外上方へ走る。

答え.3・4

解説

偽関節とは?

偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。

1.× 好発部位は「脛骨中央部」ではなく、脛骨中から下1/3の境界部である。

2.× 横骨折は、「前方凸変形」ではなく後方凸変形となりやすい。
なぜなら、下腿骨骨幹部骨折は、交通事故やスポーツなどで下腿骨に強い外傷が加わることにより発症することが多いため。ちなみに、横骨折は、骨折線が骨の長軸方向に対してほぼ垂直に入る骨折のことである。

3.〇 正しい。中下1/3の骨折では偽関節になりやすい
偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。

4.〇 正しい。斜骨折の骨折線は前内方から後外上方へ走る
近位骨片:前内方(前内方凸)
遠位骨片:後外上方(前方凹の反張下腿)
ちなみに、斜骨折は、骨の長軸に対して骨折線(骨折部に生じる亀裂)が斜めに入っているものをいう。

下腿骨骨幹部骨折の介達外力

高エネルギー損傷で発生する。脛骨中下1/3内部骨析が多い(斜骨折、らせん状骨折になりやすい。横骨折は、後方凸変形となりやすい。開放骨折となりやすい。斜骨折の骨折線は前内方から後外上方へ走る。生じやすい後遺症として、①遅延治癒(偽関節)、②変形治癒:反張下腿、③神経損傷:腓骨神経麻痺(尖足位)、④筋萎縮、慢性浮腫などである。

【固定】膝関節30~40度屈曲位で行う。ギプス固定は反張位に注意する。金属副子固定は腓骨頭周囲に綿花を当てる。固定は、大腿近位部から足MP関節まで行う。

 

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