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問題116 65歳の女性。1か月前、自宅の整理をしていて崩れそうになった重い荷物を支えようとしたとき、右上肢痛を自覚した。約1週で疼痛が軽減し、上肢もあまり不自由なく使えるようになったので放置していたが、肘屈曲時に上腕部の腫れが目立ってきたので来所した。右上腕前面に握りこぶし大の軟部腫瘤を触知する。
誤っているのはどれか。
1.腱の変性が背景にある。
2.最大筋力は正常である。
3.保存療法が第一選択である。
4.超音波観察が有用である。
答え.2
解説
軟部腫瘍とは、脂肪組織、筋組織、線維性組織、末梢神経、血管など間葉系(非上皮性)組織と呼ばれる内臓を支持している、あらゆる組織から発生する腫瘍の総称である。軟部腫瘍には、脂肪腫や神経鞘腫、血管腫などの良性軟部腫瘍から脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫などの悪性軟部腫瘍まで非常に多彩な種類の腫瘍が含まれている。
1.〇 正しい。腱の変性が背景にある。
重い荷物を支える際に負傷が発生し、症状が続くことから、腱の変性や損傷が背景にある可能性がある。
2.× 最大筋力は「正常である」とはいえない。
なぜなら、本症例の場合、腫れや右上腕前面に握りこぶし大の軟部腫瘤を触知できる状態であるため。最大筋力は、筋長が適切に保てていないと最大筋力は発揮できない。
3.〇 正しい。保存療法が第一選択である。
なぜなら、軟部腫瘍は、良性が70%、悪性が30%と良性が多いため。
4.〇 正しい。超音波観察が有用である。
なぜなら、超音波検査は、腱や筋肉の損傷を観察するのに有用であるため。1か月前の右上肢痛の原因なども検査できる。
問題117 24歳の男性。バレーボール選手である。2か月前からスパイク時、右肩後方に痛みを自覚し軽減しないため来所した。図の楕円部に圧痛と筋萎縮があり、MMTで右肩関節外旋筋力のみが4と低下していた。肩関節の多動的可動域、腱反射、感覚に左右差はなく、スパーリングテストは陰性であった。
考えられるのはどれか。
1.C7神経根症
2.長胸神経損傷
3.腋窩神経損傷
4.肩甲上神経損傷
答え.4
解説
・2か月前:右肩後方に痛みを自覚し軽減しない。
・MMT:右肩関節外旋筋力のみ4と低下。
・肩関節の多動的可動域、腱反射、感覚に左右差はなし。
・スパーリングテスト:陰性。
→肩関節外旋の主動作筋は、棘下筋や小円筋である。
棘下筋の【起始】肩甲骨の棘下窩、棘下筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の中部、【作用】肩関節外旋、上部は外転、下部は内転、【神経】肩甲上神経。
小円筋の【起始】肩甲骨後面の外側部上半、【停止】上腕骨大結節の下部、大結節稜の上端、【作用】肩関節外旋、【神経】腋窩神経。
1.× C7神経根症
本症例は、スパーリングテスト陰性であるため否定できる。Spurlingテスト(スパーリングテスト)は、頚椎の椎間孔圧迫試験である。方法は、頭部を患側に傾斜したまま下方に圧迫を加える。患側上肢に疼痛やしびれを認めれば陽性である。陽性の場合、椎間板ヘルニアや頚椎症による椎間孔狭窄(頚部神経根障害)などが考えられる。
2.× 長胸神経損傷
長胸神経は、前鋸筋の支配神経である。前鋸筋麻痺により、翼状肩甲がみられる。翼状肩甲とは、肩甲骨内側縁が後方に突出して鳥の翼のような形状をとることをいう。
3.× 腋窩神経損傷
腋窩神経麻痺は肩関節脱臼で合併しやすい。小円筋の支配神経であるため、肩関節外旋不全は生じるが、図の楕円部に圧痛と筋萎縮は、小円筋から離れているため、腋窩神経損傷は考えにくい。
4.〇 正しい。肩甲上神経損傷が考えられる。
①図の楕円部に圧痛と筋萎縮、②MMT:右肩関節外旋筋力のみ4と低下していることからも、棘下筋(肩甲上神経損傷)と考えられる。棘下筋の【起始】肩甲骨の棘下窩、棘下筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の中部、【作用】肩関節外旋、上部は外転、下部は内転、【神経】肩甲上神経。
問題118 30歳の女性。10年ぶりにテニスを再開している。休暇を取り1週間連続でプレーしたところ、右肘関節外側が痛み始めた。2週間ほどテニスを控えていたが、仕事でパソコン入力作業にも支障をきたすようになった。
陽性となる徒手検査はどれか。
1.スピード
2.トムゼン
3.リフトオフ
4.フィンケルスタイン
答え.2
解説
1.× スピード
Speedテスト(スピードテスト)は、上腕二頭筋長頭腱の炎症の有無をみる。結節間溝部に痛みがあれば陽性である。【方法】被検者は座位で、上肢を下垂・肩関節外旋位で上肢を前方挙上してもらい、検者は上肢に抵抗をかける。
2.〇 正しい。トムゼンが陽性となる徒手検査である。
Thomsen(トムセン)テストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、握りこぶしにして手関節を背屈させ、検者が掌屈させようとする。
3.× リフトオフ
Lift Off Test(リフトオフ)は、肩関節の障害部位を予測して不安定さを評価するテストである。主に、肩甲下筋の機能を評価する検査である。
4.× フィンケルスタイン
Finkelstein test(フィンケルシュタインテスト)の陽性は、狭窄性腱鞘炎を疑う。方法は、母指を中に入れて手を握り手関節の尺屈を強制させる。
問題119 45歳の男性。植木業をしている。仕事で手を酷使しているが1か月前から右手関節痛を自覚し、軽減しないので来所した。手関節に運動痛および背屈制限がみられ、手関節伸筋支帯第4区画付近に圧痛がみられた。
この疾患で正しいのはどれか。
1.加齢性の疾患である。
2.尺屈回外テストは陽性となる。
3.リックマン分類が用いられる。
4.後遺症は残らない。
答え.3
解説
・1か月前:右手関節痛を自覚、軽減しない。
・手関節に運動痛および背屈制限。
・手関節伸筋支帯第4区画付近に圧痛。
→これらの症状は、腱鞘炎が疑われる。
手関節伸筋支帯第4区画とは、
第1区画:長母指外転筋、短母指外転筋
第2区画:長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋
第3区画:長母指伸筋
第4区画:総指伸筋、示指伸筋
第5区画:小指伸筋
第6区画:尺側手根伸筋
1.× 加齢性の疾患であるとはいえない。
腱鞘炎の原因は、使い過ぎによるもので手や指を主に使う職業やスポーツする方に多くみられる。近年は片手の親指で操作するスマートフォンの利用や、同じ操作で長時間行うゲームで発症する人も増えている。また、筋力が弱いと腱に負担がかかりやすいため、女性が発症する場合が多い。本症例は植木業を営んでおり、手を酷使していることが症状の原因となっている可能性がある。
2.× 尺屈回外テストは、「陽性」ではなく陰性となる。
尺屈テストは、手関節を他動的に尺屈させる検査である。そこからさらに回外操作を加えると尺屈回外テストとなる。陽性の場合、三角線維軟骨複合体の損傷を疑われる。三角線維軟骨複合体とは、遠位橈尺関節を安定化させている支持組織である。遠位橈尺関節は手関節に隣接して存在し、肘関節に隣接する近位橈尺関節と共に前腕の回内外運動を行う。遠位橈尺関節の安定性と衝撃吸収を担うため、三角線維軟骨複合体損傷は、疼痛や機能障害の原因となる。
3.〇 正しい。リックマン分類が用いられる。
リックマン分類(Lichtman分類)は、主にキーンベック病の評価に用いられる。本症例は、腱鞘炎のほかにも、キーンベック病の疑いもかけられる。Kienböck病(キーンベック病:月状骨軟化症)とは、月状骨がつぶれて扁平化する病気をいう。月状骨は手首(手関節)に8つある手根骨の1つでほぼ中央に位置している。月状骨は、周囲がほぼ軟骨に囲まれており血行が乏しいため、血流障害になり壊死しやすい骨の1つである。10~50歳代、男性、大工など手をよく使う人に好発する。治療は、初期では装具固定、進行例では手術療法を検討する。リックマン分類について、症状の進行度は、レントゲン写真によりステージⅠ~Ⅳに分類される。
Ⅰ:レントゲン写真上では異常は認められず、MRIによって若干の萎縮が確認できる時期。
Ⅱ:骨萎縮や硬化などの症状はみられるが、圧潰は認められない時期。
Ⅲ:月状骨の圧潰や分節化が起こっている時期。
Ⅳ:月状骨だけでなく周囲の手根骨にも影響があり、関節症などの症状が起こっている時期。
4.× 後遺症は残らないと断言することはできない。
腱鞘炎の治療には、保存療法(薬物療法、安静、痛みに対する治療)や手術があげられる。治療が適切に行われれば、後遺症が残らないこともありますが、全ての患者で後遺症が残らないわけではない。
問題120 20歳の男性。大学レスリング部に所属している。高校3年生のとき、試合で右膝内側側副靱帯を損傷した。それ以来、練習中に数回、膝のロッキングを経験している。昨日、練習中に右膝を負傷した。動かさなければ痛みはないが、内側関節裂隙に圧痛がり軽度の膝蓋跳動がみられた。
陽性となるのはどれか。
1.ステインマンテスト
2.エデンテスト
3.ホーマンズ徴候
4.ガワーズ徴候
答え.1
解説
本症例は、半月板損傷が考えられる。半月板とは、膝関節の大腿骨と脛骨の間にある板で、内側・外側にそれぞれがある。役割として衝撃吸収と安定化をはたす。損傷した場合、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりが起こる。重度の場合は、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」が起こり、歩けなくなるほど痛みが生じる。
ちなみに、膝蓋跳動は、関節貯留液の有無の検査である。膝蓋骨を押すと大腿骨に衝突してコツコツと音がすると陽性である。
1.〇 正しい。ステインマンテストが陽性となる。
ステインマンテスト(Steinman sign test)は、膝関節の半月板損傷を診断するための検査方法である。膝、股関節を屈曲し、検者は足関節を保持し下腿の内・外旋を行い膝関節の痛みの誘発の有無を調べる(膝の屈曲により痛みが出現する場合には痛みのない範囲で行う)。内旋時に外側に痛みの誘発があれば外側半月板の障害を推定する。外旋時に内側に痛みの誘発があれば内側半月板の障害を推測できる。内旋で内側に、外旋で外側が痛む場合は、滑膜の炎症、関節包の肥厚・変形・過緊張を疑う。
2.× エデンテスト
Edenテスト(エデンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、患者は座位になり胸を張った状態で両方の肩関節を伸展する。検査者は橈骨動脈の拍動をモニターして約1分程度保持する。橈骨動脈の拍動が減弱または消失した場合、胸郭出口症候群と判断する。
3.× ホーマンズ徴候
Homans徴候(ホーマンズ徴候)とは、深部静脈血栓症でみられる理学所見である。 膝関節伸展位で足関節の背屈を他動的に強制する。腓腹部に疼痛を訴える場合(Homans徴候陽性)には下腿の深部静脈血栓症の可能性を示唆する。
4.× ガワーズ徴候
Gowers(ガワーズ)徴候(登はん性起立)は、床から起立する時、まず床に手をついて、お尻を高くあげ、次にひざに手をあてて、手の力を借りて立ち上がる。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでみられる。