第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午後36~40】

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問題36 悪性リンパ腫で正しいのはどれか。

1.無痛性リンパ節腫大を呈する。
2.異型リンパ球が増加する。
3.遺伝性疾患である。
4.抗菌薬が著効する。

答え.1

解説

リンパ腫とは?

リンパ系腫瘍は、造血器腫瘍の中でリンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞)に生じた遺伝子異常によって腫瘍性増殖を来し、白血病や悪性リンパ腫などの病態をとる。リンパ系腫瘍のうち、増殖した腫瘍細胞が末梢血や骨髄中で認められるものをリンパ性白血病といい、腫瘍細胞がリンパ節内やリンパ節外の臓器で腫瘤を形成するものを悪性リンパ腫という。悪性リンパ腫は、リンパ節組織由来の原発性悪性腫瘍であり、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別される。成人に好発し、わが国では非ホジキンリンパ腫が90%以上を占めている。リンパ腫のほとんどがリンパ節の腫脹で発症し、全身症状として体重減少、寝汗、発熱を認める場合もある。リンパ節腫大に伴い、顔や四肢など病変の末端側に浮腫を生じることもある。

1.〇 正しい。無痛性リンパ節腫大を呈する
悪性リンパ腫の典型的な症状は、無痛性で急速に進行するリンパ節腫大である。リンパ節腫大は、リンパ腫細胞の増殖によるものである。

2.× 異型リンパ球は、「増加する」のではなく、増加しない
異型リンパ球とは、ウイルスなどの免疫刺激に反応して末梢血中のリンパ球が活性化し形態が変化したものである。近年は反応性リンパ球と呼ぶことが推奨されている。

3.× 遺伝性疾患ではない
なぜなら、悪性リンパ腫は、免疫系細胞(リンパ球)のがんであるため。

4.× 抗菌薬が著効しない
なぜなら、悪性リンパ腫はがんであり、感染症ではないため。悪性リンパ腫の治療には、化学療法、放射線療法、免疫療法、骨髄移植などが用いられる。抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。抗菌薬の不適正使用により、薬剤耐性菌の出現が問題となっている。適正に感染症診断を行なったうえで必要時に内服を行う。

 

 

 

 

 

問題37 多発性骨髄腫の所見で誤っているのはどれか。

1.貧血
2.腎機能障害
3.舌乳頭萎縮
4.脊椎圧迫骨折

答え.3

解説

多発性骨髄腫とは?

 多発性骨髄腫は形質細胞がクローン性に増殖するリンパ系腫瘍である。増殖した形質細胞やそこから分泌される単クローン性免疫グロブリンが骨病変、腎機能障害、M蛋白血症などさまざまな病態や症状を引き起こす。多発性骨髄腫の発症年齢は65~70歳がピークで男性が女性より多く約60%を占める。腫瘍の増大、感染症の合併、腎不全、出血、急性白血病化などで死に至る。

 主な症状として、頭痛、眼症状の他に①骨組織融解による症状(腰痛・背部痛・圧迫骨折・病的骨折・脊髄圧迫症状・高カルシウム血症など)や②造血抑制、M蛋白増加による症状(貧血・息切れ・動悸・腎機能障害)、易感染性(免疫グロブリン減少)、発熱(白血球減少)、出血傾向(血小板減少)などである。

1~2.〇 貧血/腎機能障害
多発性骨髄腫では、造血抑制、M蛋白増加による症状がみられるため。

3.× 舌乳頭萎縮
Hunter舌炎の3徴候(舌乳頭の萎縮、舌の発赤、灼熱感)でみられる。原因はビタミンB12の欠乏である。

4.〇 脊椎圧迫骨折
多発性骨髄腫では、骨組織融解による症状がみられるため。

 

 

 

 

 

問題38 糖尿病の診断基準で正しいのはどれか。

1.HbA1c:6.5%以上
2.随時血糖値:126mg/dL以上
3.空腹時血糖値:110mg/dL以上
4.75g経口ブドウ糖負荷試験で1時間後血糖値:200mg/dL以上

答え.1

解説

糖尿病の診断基準

・HbA1c:6.5%以上
・随時血糖値:200mg/dL以上
・空腹時血糖値:126mg/dL以上
・75g経口ブドウ糖負荷試験で2時間後血糖値:200mg/dL以上

1.〇 正しい。HbA1c:6.5%以上は、糖尿病の診断基準である。
ヘモグロビンA1cとは、ヘモグロビンのアミノ基とブドウ糖が結合したもので過去1~2ヶ月程度の血糖の高さを反映する検査である。

2.× 随時血糖値は、「126mg/dL以上」ではなく200mg/dL以上である。
随時血糖値とは、食事と採血時間との時間関係を問わないで測定した血糖値(糖負荷後の血糖値は除く)とされている。

3.× 空腹時血糖値は、「110mg/dL以上」ではなく126mg/dL以上である。
空腹時血糖値とは、一日の中で、波のように変動する血糖値のうち、比較的変化が小さいタイミングで測定した値となる。正確には10時間以上食事を摂らない状態で測定するが、一般的な健康診断では、朝ごはんを食べずに採血したものを空腹時血糖値と呼んでいる。

4.× 75g経口ブドウ糖負荷試験は、「1時間後」ではなく2時間後血糖値が200mg/dL以上の場合である。
経口ブドウ糖負荷試験は、糖尿病の診断方法のひとつ。糖尿病が疑われる患者に対し、10時間の絶食後に一定量のブドウ糖水溶液を短時間で飲んでもらい、意図的に一時的な高血糖を誘発させ一定時間経過後の血糖値の値から、糖尿病が存在するかどうかを判断する方法である。血糖が200mg/dl以上などの明らかな糖尿病所見がなく判定困難な場合には、診断のための検査として経口ブドウ糖負荷試験を行う。

糖尿病とは?

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 

 

 

 

 

問題39 関節リウマチで誤っているのはどれか。

1.女性に多い。
2.背部痛が朝方に生じる。
3.中手指節関節に好発する。
4.関節炎は左右対称に起きる。

答え.2

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

1.〇 女性に多い。
男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。

2.× 朝方に生じるのは、「背部痛」ではなくこわばりである。
全身症状として、活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。ちなみに、背部痛は、強直性脊椎炎に関連する症状である。強直性脊椎炎は、痛みを主症状とする疾患である。脊椎や仙腸関節の炎症が主体となる慢性炎症性疾患である。疼痛は腰痛や殿部痛から始まり、次第に広がっていく。10歳代の若年男性に多く、ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)、竹様脊椎といった症状も特徴である。

3.〇 中手指節関節に好発する。
関節リウマチにおいて起こりやすい関節破壊は、①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。

4.〇 関節炎は左右対称に起きる。
関節症状の関節炎は、多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)特徴を持つ。

 

 

 

 

 

問題40 ネフローゼ症候群の所見で誤っているのはどれか。

1.浮腫
2.尿蛋白陽性
3.血清総蛋白低下
4.低コレステロール血症

答え.4

解説

ネフローゼ症候群とは?

ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。

1.〇 正しい。浮腫
ネフローゼ症候群は、蛋白尿が起こり、血漿タンパク質が低下するため、浮腫が発生する。浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起こることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

2.〇 正しい。尿蛋白陽性/血清総蛋白低下
ネフローゼ症候群は、尿中に大量のタンパク質(蛋白尿)が漏れる。ちなみに、血清蛋白は血漿中(血液を放置したときの上澄みの部分)の約8%を占める多種類の蛋白成分の合計で総蛋白と呼ばれる。総蛋白は60%のアルブミン(ALB)と20%のグロブリ ンが主成分である。

4.× 低コレステロール血症
ネフローゼ症候群では、高コレステロール血症を引き起こしやすい。なぜなら、肝臓がコレステロールとリポ蛋白を過剰に産生するため。ちなみに、低コレステロール血症の原因として、肝硬変など重症肝疾患、バセドウ病など甲状腺機能亢進症、アジソン病など副腎不全、吸収不良、栄養不良、がんなど悪性腫瘍、慢性感染症、慢性炎症性疾患、Gaucher病、薬剤(ニコチン酸誘導体)があげられる。

脂質異常症の診断基準

脂質異常症の発症には、過食、運動不足、肥満、喫煙、アルコールの飲みすぎ、ストレスなどが関係しているといわれている。

【脂質異常症の診断基準】
①高LDL(悪玉)コレステロール血症:140mg/dl以上
②低HDL(善玉)コレステロール血症:40mg/dl未満
③中性脂肪(トリグリセライド:TG):150mg/dl以上の高トリグリセライド血症 (高中性脂肪血症)

※2006年までの診断基準では総コレステロール値(220mg/dl以上)であったが、現在は参考値としての記載で診断基準から外されている。

 

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