第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午後61~65】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題61 足の舟状骨が無腐性壊死となるのはどれか。

1.セーバー(Sever)病
2.ブラント(Blount)病
3.ケーラー(Kohler)病
4.ペルテス(Perthes)病

答え.3

解説
1.× セーバー(Sever)病
セーバー病は、踵骨骨端部に生じる骨端症である。

2.× ブラント(Blount)病
ブラント病とは、脛骨が彎曲する病気である。放置すると40%程が手術を必要となる。

3.〇 正しい。ケーラー(Kohler)病は、足の舟状骨が無腐性壊死となる。
ケーラー病は、足の舟状骨への血液供給が途絶えるためにその部分が壊死する病気(無腐性壊死)である。ケーラー病は骨軟骨症の一種である。ケーラー病の原因は、足の舟状骨への血液供給不足であるが、なぜ血液の供給が不足するのかは分かっていない。この病気は通常、3~5歳の小児(男児に多い)の片足のみに起こる。足が腫れて痛み、足のアーチ部分に圧痛が生じる。体重支持と歩行によって不快感が増すため、歩き方(歩様)に異常がみられる。スポーツの中止やアーチ足底板の利用により、舟状骨へのストレスを低減させることで良好な予後が期待できる。レントゲンの特徴として、正常よりも小さな舟状骨が確認できる。(※参考:「ケーラー病とは?」MSDマニュアル様HPより)

4.× ペルテス(Perthes)病
ペルテス病とは、小児期における血行障害による大腿骨頭、頚部の阻血性壊死が起こる原因不明の疾患である。骨頭・頚部の変形が生じる。初期症状は、跛行と股関節周囲の疼痛や大腿部にみられる関連痛で、股関節の関節可動域制限も生じる。治療は大腿骨頭壊死の修復が主な目標であり、治療後は歩容の異常がなく、通常の日常生活を送れるようになることが多い。男女比は4:1である。好発年齢は、「6~7歳」である。発生率は1万人に1.5人と言われ、そのうち約10%が両側に発症するが、たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。

 

 

 

 

 

問題62 四肢循環障害で正しいのはどれか。

1.レイノー(Raynaud)症候群は若い男性が多い。
2.静脈瘤は深部静脈血栓に続発するものが多い。
3.閉塞性動脈硬化症は精神的ストレスが関係する。
4.バージャー(Buerger)病は生命予後が良好である。

答え.4

解説
1.× レイノー(Raynaud)症候群は、若い「男性」ではなく女性が多い。
小児期(5~14歳)と成人期(35~64歳)に発症することが多いとされており、男女比は成人で1対2.6と女性に多く、小児期には性差はないといわれている。ちなみに、Raynaud現象とは(レイノー現象とは)、四肢(特に手指)が蒼白化、チアノーゼを起こす現象である。手指の皮膚が寒冷刺激や精神的ストレスにより蒼白になり、それから紫色を経て赤色になり、元の色調に戻る一連の現象をいう。

2.× 静脈瘤は、深部静脈血栓に続発するものが多いとはいえない
なぜなら、静脈瘤は、主に表在静脈に発生するものであるため。深部静脈血栓とは異なる。ちなみに、下肢静脈瘤とは、体のすみずみに行きわたった血液が、心臓に戻る血管を静脈といい、足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状に浮き出て見えるようになった状態のことをさす。

3.× 閉塞性動脈硬化症は、「精神的ストレス」ではなく動脈硬化が関係する。
閉塞性動脈硬化症とは、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

4.〇 正しい。バージャー(Buerger)病は生命予後が良好である
閉塞性血栓血管炎(バージャー病)とは、脚や腕の細い動脈や中間サイズの動脈が、炎症を起こして閉塞する病気である。喫煙は病変の増悪因子であるが、原因不明である。症状は、腕や脚への血流減少による冷感、しびれ、チクチクする感覚、灼熱感などである。治療で最も重要なのは禁煙で、薬剤も有効なことがある。寒さにより血管が狭くなるため(収縮)、寒さへの曝露を回避することが助けになる。

 

 

 

 

 

問題63 腰部脊柱管狭窄症で陽性となるテストはどれか。

1.ケンプ
2.アドソン
3.ジャクソン
4.スパーリング

答え.1

解説

腰部脊柱管狭窄症とは?

腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行が特徴である。

1.〇 正しい。ケンプは、腰部脊柱管狭窄症で陽性となるテストである。
Kempテスト(ケンプテスト)の陽性は、脊椎管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアを疑う。検者は患者の両肩に手を置き、患者の体幹を回旋しながら左右の斜め後方に伸展させる。

2.× アドソン
Adsonテスト(アドソンテスト)の陽性は、胸郭出口症候群を疑う。患者の頭部を検査側に回旋させ、患側上肢を伸展・外転位に保持し、橈骨動脈の拍動を確認したのち、患者に頭部を伸展・深呼吸させる。そして、再び橈骨動脈の拍動を確認する。

3.× ジャクソン
Jacksonテスト(ジャクソンテスト)は、頚部神経根障害(頚椎椎間板ヘルニア)を検査する。方法として、被験者は頸部伸展し、検査者が上から下に押し下げる。このとき肩や上腕、前腕、手などに痛みやしびれが誘発されるかどうかで神経根に障害が生じているか否かを診断する。

4.× スパーリング
Spurlingテスト(スパーリングテスト)は、頚椎の椎間孔圧迫試験である。方法は、頭部を患側に傾斜したまま下方に圧迫を加える。患側上肢に疼痛やしびれを認めれば陽性である。陽性の場合、椎間板ヘルニアや頚椎症による椎間孔狭窄(頚部神経根障害)などが考えられる。

 

 

 

 

 

問題64 上肢疾患と好発年齢の組合せで正しいのはどれか。

1.離断性骨軟骨炎:壮年期
2.上腕骨外科頸骨折:老年期
3.石灰沈着性滑液包炎:学童期
4.上腕二頭筋断裂:青年期

答え.2

解説
1.× 離断性骨軟骨炎は、「壮年期」ではなく青年期である。
肘離断性骨軟骨炎(野球肘、関節ねずみ)は、慢性炎症に分類される、肘への反復する負荷が原因となるスポーツ障害である。上腕骨小頭に好発する。

2.〇 正しい。上腕骨外科頸骨折:老年期
上腕骨外科頸骨折とは、上腕骨の骨折の中で、特に高齢者に多く発生する骨折の一つであり、骨頭から結節部にかけての太い部分から骨幹部に移行する部位で発生する。老年期とは、一般的に65歳以上をいう。

3.× 石灰沈着性滑液包炎は、「学童期」ではなく中年から壮年期である。
腱板に沈着していた石灰が肩峰下滑液包へ流出して白血球に貪食され、肩峰下滑波包内に急性炎症を誘発する疾患である。突然発症する。五十肩(肩関節周囲炎)の症状とよく似ている。

4.× 上腕二頭筋断裂は、「青年期」ではなく中年から壮年期である。
上腕二頭筋断裂とは、上腕を構成する上腕二頭筋の腱が、肘もしくは肩の位置において切れてしまうことを指す。突然強い力が加わった場合(重い物を持ち上げるなど)や、肘を強く伸ばしたりひねったりすることで起こる。典型的には、このような断裂は酷使(ウェイトリフティングなどで起こる)によって腱がすでに弱くなっている場合に起こる。

 

 

 

 

 

問題65 フォルクマン(Volkmann)拘縮の阻血症状でないのはどれか。

1.疼痛
2.皮膚紅潮
3.運動麻痺
4.脈拍消失

答え.2

解説

MEMO

フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。

1.3~4.〇 疼痛/運動麻痺/脈拍消失
フォルクマン拘縮は、慢性的な血流不足が筋肉や神経に損傷を与えることで発生する症状を伴う。

2.× 皮膚紅潮は、フォルクマン(Volkmann)拘縮の阻血症状でない。
フォルクマン拘縮においては、虚血性壊死が起こるため、「皮膚紅潮」ではなく、むしろ、患部の皮膚は蒼白になる。皮膚紅潮は、血流が増加している状態を示すことが多い。皮膚内にある毛細血管が拡張して血液がうっ滞するために皮膚が赤くみえる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)