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問題116 次の文で示す患者の病証で最も適切なのはどれか。
「43歳の女性。主訴は下痢。最近、近隣の住人とのトラブルがあり、咽のつかえを自覚し、よくため息をつくようになった。その後、下痢を発症。腹痛の後に生じることが多い。」
1.肝気犯脾証
2.心脾虚証
3.脾胃湿熱証
4.脾腎陽虚証
解答1
解説
・43歳の女性(主訴:下痢)。
・最近:近隣の住人とのトラブルがあり、咽のつかえを自覚。
・よくため息をつくようになった。
・その後:下痢あり、腹痛の後に生じることが多い。
→本症例は、肝気犯脾が疑われる。肝鬱気滞(精神抑鬱、急躁、易怒、胸肋部痛、脈弦、梅核気など)のほか、脾胃の運化機能が失調していると考えられる。
1.〇 正しい。肝気犯脾証は、本症例の病証である。肝気犯脾証とは、身体の諸機能を調節(疏泄)する臓腑である五臓の肝の気(肝気)の流れが滞り、その影響が脾に及んで脾気が停滞し、運化機能が失調し、食欲不振になっている体質である。 腹部膨満感や胸脇部の痛み、腹鳴、排ガス、軟便などの症状が生じる。ちなみに、脾の生理として、①運化(飲食物を水穀の精微に変化させ、心・肺に運ぶ)、②統血(血が脈中から漏れ出るのを防ぐ(気の固摂作用))などがあげられ、脾は気血生成の源、生痰の源といわれる。
2.× 心脾虚証とは、心と脾の働きが低下した状態を指す。心の弁証として、主な症状は、心悸、心煩、胸悶、不眠、意識障害などがあげられる。
3.× 脾胃湿熱証は、だるさ、体の重さなどの湿の症状に熱象の症状として口渇、皮膚の痒み、泥状の熱感を伴った排便など湿熱の症候を呈す。
4.× 脾腎陽虚証とは、脾と腎の陽が不足している状態である。脾腎陽虚になると、慢性の下痢や腰痛、浮腫(むくみ)、尿量減少、冷えなどが起こる。ちなみに、陽虚(虚寒)は、寒証+気虚症状。寒がり、四肢の冷え、顔面蒼白、下痢、白色帯下、腹痛、自汗、倦怠感、息切れ、食欲不振、脈遅・弱などである。
問題117 次の文で示す患者の病証で最も適切なのはどれか。
「82歳の女性。主訴は腰痛。頻尿があり、くしゃみなどで失禁することがある。」
1.腎陽虚
2.腎精不足
3.腎不納気
4.腎気不固
解答4
解説
・82歳の女性(主訴:腰痛)。
・頻尿があり、くしゃみなどで失禁する。
→本症例は、腎気不固が疑われる。腎気虚は、①腎気不固(遺尿、頻尿、流産・早産、倦怠感、脈沈弱など)、②腎不納気(呼吸困難、息切れ、呼多吸少、倦怠感、脈沈弱など)がある。それぞれの選択肢の消去理由もしっかりおさえておこう。
1.× 腎陽虚は、腰膝酸軟、冷え、畏寒、陽萎、不妊、泄瀉、夜間尿、舌苔白などである。陽虚に対し行う。
2.× 腎精不足は、倦怠感、発育不全、不妊、陽萎、耳鳴、視力減退、脱毛、腰膝酸軟などである。精の漏出を防ぐ。
3.× 腎不納気は、呼吸困難、息切れ、呼多吸少、倦怠感、脈沈弱などである。腎気虚のひとつである。
4.〇 正しい。腎気不固は、本症例の病証である。なぜなら、本症例は、腹圧性尿失禁が疑われるため。腹圧性尿失禁とは、腹圧をかけるような運動時(重い荷物を持ち上げたときなど)に尿が漏れる状態で、男性よりも女性に多くみられる。尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が弱くなることが原因で、加齢、出産、喫煙、肥満などと関連している。
問題118 次の文で示す患者の病証に対する治療方針で適切なのはどれか。
「32歳の男性。項から背中にかけてこわばりを自覚した。強い悪寒と軽い熱っぽさも伴う。鼻がつまり咳が出てきたため来院。脈は浮緊。」
1.解表
2.潤肺
3.利湿
4.和胃
解答1
解説
・32歳の男性。
・自覚:項から背中にかけてこわばり。
・強い悪寒と軽い熱っぽさも伴う。
・鼻がつまり咳が出てきたため来院。
・脈は浮緊。
→本症例は、悪寒発熱(悪寒と発熱がともにあるもの)が疑われる。外感表証に対する治療方針を選択しよう。
1.〇 正しい。解表は、本症例の病証に対する治療方針である。なぜなら、外感表証であるため。表の邪を除去する必要がある。
2.× 潤肺は、肺の乾燥症状に対し、肺を潤し、喘咳を緩和する治療である。
3.× 利湿は、湿が下焦にたまっているときに対し、脾を補って水湿を除去する治療である。
4.× 和胃は、胃の機能失調に対し、胃の機能を立て直す治療である。
問題119 次の文で示す患者の病証に対し、八会穴を用いて治療を行う場合、最も適切なのはどれか。
「35歳の女性。1か月前に出産し、現在授乳中だが、乳房に張った感じがなく、乳汁の分泌が少ない。出産時に出血が多かったせいか顔色は青白く、爪や唇の色は白っぽい。舌質は淡、脈は虚細。」
1.膈兪
2.大杼
3.陽陵泉
4.太淵
解答1
解説
・35歳の女性(1か月前:出産)。
・現在:授乳中、乳房に張った感じがなく、乳汁の分泌が少ない。
・出産時:出血が多かったせいか顔色は青白く、爪や唇の色は白っぽい。
・舌質は淡、脈は虚細。
→本症例は、気血虚とは、気虚(気の不足)と血虚(血の不足)が同時に起こる病証である。血虚は、眩暈、顔面蒼白、動悸、不眠、健忘、目のかすみ、しびれ、痙攣、月経痛、経少、経色淡白、視力減退、爪の変形などである。
~八会穴~
腑会-中脘【任】、血会-膈兪【膀】、臟会-章門【肝】、骨会-大杼【膀】、筋会-陽陵泉【胆】、脈会-太淵【肺】、髄会-懸鍾【胆】、気会-膻中【任】
1.〇 正しい。膈兪は、本症例の病証に対し、八会穴を用いて治療を行う場合の治療穴である。血会である膈兪(※読み:かくゆ)は、上背部、第7胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。
2.× 大杼は、骨会に該当する。
大杼(※読み:だいじょ)は、上背部、第1胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。
3.× 陽陵泉は、筋会に該当する。
陽陵泉(※読み:ようりょうせん)は、下腿外側、腓骨頭前下方の陥凹部にあるに位置する。
4.× 太淵は、脈会に該当する。
太淵(※読み:たいえん)は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部に位置する。
問題120 次の文で示す患者の病証に対して原絡配穴法により治療を行う場合、経穴部位として最も適切なのはどれか。
「48歳の男性。主訴は腰痛。痛みで上体を反らすことができない。隅の渇き、陰嚢の疼痛を伴うこともある。」
1.下腿前内側、脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸
2.下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方5寸
3.足関節後内側、内果尖とアキレス腱の間の陥凹部
4.足外側、第5中足骨粗面の遠位、赤白肉際
解答2
解説
・48歳の男性(主訴:腰痛)。
・痛みで上体を反らすことができない。
・隅の渇き、陰嚢の疼痛を伴う。
→原絡配穴法は、主に病んでいる経脈の原穴と、それに関連する表裏の経脈の絡穴を組み合わせて治療する方法である。
原穴:経絡における気の流れを調整する穴、臓腑や経絡の病証に対して行う。
絡穴:表裏関係にある別の経絡に影響を与え、その経絡の病証を改善を図る。
【本症例の場合】
・主:足の厥陰肝経
・客:足の少陽胆経
1.× 下腿前内側、脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸は、蠡溝である。
蠡溝(※読み:れいこう)は、足の厥陰肝経である。
2.〇 正しい。下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方5寸は、本症例の病証に対して原絡配穴法により治療を行う場合の経穴部位である。
下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方5寸は、光明である。光明は、足の少陽胆経である。
3.× 足関節後内側、内果尖とアキレス腱の間の陥凹部は、太渓である。
太渓(※読み:たいけい)は、足の少陰腎経である。
4.× 足外側、第5中足骨粗面の遠位、赤白肉際は、京骨である。
京骨(※読み:けいこつ)は、足の太陽膀胱経である。