第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後126~130】

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問題126 次の文で示す患者への施術で罹患神経への治療穴として最も適切なのはどれか。
「30歳の女性。1週間前から手の小指側にしびれを感じ、母指の内転運動障害がみられる。フローマン徴候陽性、ファレンテスト陰性。」

1.列欠
2.霊道
3.大陵
4.陽池

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の女性。
・1週間前から手の小指側にしびれを感じ、母指の内転運動障害がみられる。
・フローマン徴候:陽性、ファレンテスト:陰性
→本症例は、尺骨神経麻痺が疑われる。尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。ちなみに、Phalenテスト(ファレンテスト)は、手根管症候群の診断に用いられ、正中神経障害によって陽性となる。

1.× 列欠は、橈骨神経支配である。
列欠(※読み:れっけつ)は、前腕橈側、長母指外転筋腱短母指伸筋腱の間、手関節掌側横紋の上方1寸5分に位置する。

2.〇 正しい。霊道は、本症例の施術で罹患神経(尺骨神経)への治療穴である。
霊道(※読み:れいどう)は、前腕前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋の上方1寸5分に位置する。

3.× 大陵は、正中神経支配である。
大陵(※読み:だいりょう)は、手関節前面、長掌筋腱橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋上に位置する。

4.× 陽池は、橈骨神経支配である。
陽池(※読み:ようち)は、手関節後面、総指伸筋腱の尺側陥凹部、手関節背側横紋上に位置する。

 

 

 

 

 

問題127 徒手検査所見と罹患部への治療穴の組合せで適切なのはどれか。

1.チェアテスト陽性:支正
2.グラスピングテスト陽性:膝陽関
3.K・ボンネットテスト陽性:関元兪
4.インピンジメントテスト陽性:臑会

解答

解説
1.× チェアテスト陽性ではなく「支正」ではなく曲池である。Chairテストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、患者さんに肘関節伸展位のまま手で椅子を持ち上げてもらう。
・支正は、前腕後内側、尺骨内縁と尺側手根屈筋の間、手関節背側横紋の上方5寸に位置する。
・曲池は、肘外側、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線上の中点に位置する。長・短橈側手根伸筋の治療穴である。

2.〇 正しい。グラスピングテスト陽性:膝陽関
・Graspingテスト(グラスピングテスト)は、腸脛靭帯を圧迫してテンションをかけた状態で、膝の曲げ伸ばしで症状が再現されるかどうかで判断する。腸脛靱帯炎とは、ランナー膝ともいい、膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生している状態を指す。特にマラソンなどの長距離ランナーに好発し、ほかにバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ等にも多い。
・膝陽関(※読み:ひざようかん)は、膝外側、大腿二頭筋腱と腸脛靭帯の間の陥凹部、大腿骨外側上顆の後上縁に位置する。

3.× K・ボンネットテスト陽性ではなく「関元兪」ではなく胞肓や秩辺などである。Kボンネットテストとは、状筋症候群の診断に使用される誘発テストである。やり方は、背臥位の被検者は、検査側の膝関節屈曲位にて、対側の脚の上に乗せる(梨状筋に伸展ストレスを加える)。殿部から太ももにかけて、放散痛が出た場合は陽性である。
・関元兪(※読み:かんげんゆ)は、腰部、第5腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。
・胞肓(※読み:ほうこう)は、殿部、第2後仙骨孔と同じ高さ、正中仙骨稜の外方3寸に位置する。
・秩辺(※読み:ちっぺん)は、殿部、第4後仙骨孔と同じ高さ、正中仙骨稜の外方3寸に位置する。

4.× インピンジメントテスト陽性ではなく「臑会」ではなく肩髎や巨骨などである。インピンジメントの検査には、①Neerテスト、②Hawkinsテストがある。①Neerテスト(ニアテスト)は、患者の後側方に立ち、一方の手で肩甲骨を保持し、もう一方の手で上肢(回内位)を最大挙上させ、大結節を肩峰前縁に圧迫させる。挙上90°~120°で疼痛が誘発されれば陽性である。②Hawkinsテスト(ホーキンズテスト)は、患者の腕を90度まで上げ、肘を90度に屈曲させ、強制的に肩関節を内旋し、痛みの有無を調べる。
・臑会(※読み:じゅえ)は、上腕後面、三角筋の後下縁、肩峰角の下方3寸に位置する。
・肩髎(※読み:けんりょう)は、肩周囲部、肩峰角と上腕骨大結節の間の陥凹部である。
・巨骨(※読み:ここつ)は、肩周囲部、鎖骨の肩峰端と肩甲棘の間の陥凹部に位置する。

肩峰下インピンジメントとは?

肩峰下インピンジメントとは、上腕骨大結節と棘上筋腱停止部が、烏口肩峰アーチを通過する際に生じる、棘上筋腱の機械的圧迫のことである。この機械的圧迫は棘上筋腱に集中して発生する。つまり、肩の近くの関節の細いところで、骨同士の隙間が、こすれがあっている状態である。 原因として、年齢や疲労、姿勢の影響で動きの連携がとれずに衝突するとされている。炎症や出血を起こす。

 

 

 

 

 

問題128 次の文で示す症例で罹患筋を対象に施術する場合、最も適切なのはどれか。
「32歳の男性。野球チームでピッチャーをしている。最近、投球動作でフォロースルー期に肩後方の痛みを感じるようになった。」

1.前鋸筋
2.小胸筋
3.肩甲下筋
4.小円筋

解答

解説

 

本症例のポイント

・32歳の男性。
・野球チームでピッチャーをしている。
・最近:投球動作でフォロースルー期(肩後方の痛み)を感じる。
→本症例は、フォロースルー期に肩後方に激痛が認められていることから、ベネット(Bennett)損傷が考えられる。Bennett損傷(ベネット損傷)とは、軟部組織損傷ともいい、投球動作により上腕三頭筋長頭や肩関節後方関節包に繰り返しの牽引力がかかり起こる骨膜反応である。野球暦の長い選手、特に投手に多く、上腕三頭筋長頭後方下関節包の拘縮を合併する。炎症を伴うため、疼痛があるときは投球を中止し、初期は、冷罨法、固定、提肘により運動を制限する。疼痛軽減後は、ストレッチ運動や筋力強化訓練を行う。ちなみに、フォロースルー期(Follow through)とは、ボールが手から離れて投球動作が終わるまでをいう。腕が振り抜けて肩甲骨の外転(肩関節外転・外旋の強制)が強調され、手指は遠心力によって血行障害を起こすことがある。

1.× 前鋸筋の【起始】第1~8(~10)肋骨前外側面、【停止】第1,2肋骨とその間の腱弓からの筋束は肩甲骨上角。第2,3肋骨からは分散して広く肩甲骨内側縁。第4肋骨以下からは下角、【作用】全体:肩甲骨を前方に引く。下2/3:下角を前に引いて肩甲骨を外方に回旋し、上腕の屈曲と外転を補助。最上部:肩甲骨をやや引き上げる、【神経】長胸神経である。

2.× 小胸筋の【起始】第2(3)~5肋骨表面、【停止】肩甲骨の烏口突起、【作用】肩甲骨を前下に引く。このとき下角が後内側に回旋する。肩甲骨を固定すると肋骨を引き上げる。【支配神経】内側および外側胸筋神経:C7,C8,(T1)である。

3.× 肩甲下筋の【起始】肩甲骨肋骨(肩甲下窩)と筋膜内面、【停止】上腕骨前面の小結節、小結節稜上端内側、【作用】肩関節内旋、【支配神経】肩甲下神経:C5,C6である。

4.〇 正しい。小円筋を施術する。なぜなら、肩関節外転・外旋の強制されることで小円筋が損傷されるため。小円筋の【起始】肩甲骨後面の外側部上半、【停止】上腕骨大結節の下部、大結節稜の上端、【作用】肩関節外旋、【支配神経】腋窩神経:C5,C6である。

 

(図引用:『肩 その機能と臨床 第4版』より ※図中の丸は関係ない)

 

 

 

 

 

問題129 次の文で示す高齢者の機能評価はどれか。
「椅子から立ち上がり、3m先の目印を回って、再び椅子に座るまでの歩行時間を測定する。」

1.PCGモラールスケール
2.ロコモテスト
3.タイムドアップアンドゴーテスト
4.バーセルインデックス

解答

解説
1.× PCGモラールスケール(Philadelphia Geriatric Center Morale Scale)とは、主観的幸福感を評価できる高齢者のQOL評価尺度である。高齢者が自分の人生に対してどの程度幸福に感じているかを測定するものとなっている。自分自身の幸福感に対する17項目の質問により構成されており、はい/いいえで解答し、点数化され、最高点は17点である。

2.× ロコモテスト(ロコモ度テスト)とは、①下肢筋力、②歩幅、③身体状態・生活状況を評価する 3 つのテストを行い、これらのテスト結果を年齢平均値と比較することによって、年齢相応の移動能力を維持しているかを判定するものである。もし年齢相応の移動能力に達していない場合、将来ロコモとなり得る危険度が高いと考えられる。

3.〇 正しい。タイムドアップアンドゴーテストは、「椅子から立ち上がり、3m先の目印を回って、再び椅子に座るまでの歩行時間を測定する」高齢者の機能評価である。タイムドアップアンドゴーテストは、運動器不安定症の指標である。下肢の筋力、バランス、歩行能力、易転倒性といった日常生活機能との関連性が高いことが示唆されている。ちなみに、カットオフ値は14秒程度である。

4.× バーセルインデックスとは、日常生活活動(ADL)の評価である。バーセル・インデックスの評価項目は、10項目(①食事、②椅子とベッド間の移乗、③整容、④トイレ動作、⑤入浴、⑥移動、⑦階段昇降、⑧更衣、⑨排便コントロール、⑩排尿コントロール)あり、100点満点で評価され

ロコモティブシンドロームとは?

ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害により移動能力が低下し、「要介護」のリスクが高い状態のことである。(提唱:日本整形外科学会)予防策として、片脚立位・スクワットからなる「ロコトレ」を行うよう推奨している。対象者がすでに運動器の障害や身体機能低下を有している場合も多いため、トレーニングの際には、疼痛や転倒などに十分配慮して行う必要がある。

 

 

 

 

 

問題130 次の文で示す症例に対する治療でデルマトームを応用した経穴として最も適切なのはどれか。
「22歳の女性。主訴は便秘。便意の抑制の習慣化により発症した。近医を受診し、器質的病変は認められなかった。」

1.隔兪
2.胃兪
3.大腸兪
4.中髎

解答

解説

本症例のポイント

・22歳の女性(主訴:便秘)。
・便意の抑制の習慣化により発症。
・近医を受診し、器質的病変はなし
→本症例は、習慣性便秘が疑われる。習慣性便秘とは、直腸性便秘ともいい、習慣的に便意をおさえたり、下剤・浣腸を乱用していることにより排便反射が減弱し、排便が起こりにくくなる。 便は硬く、途切れがちである。 朝食を十分にとり、線維の多い食物や水分をとる。

→機能性疾患とは、臓器に明らかな異常がないにも関わらず、症状がある状態のことを指す。ちなみに、器質的疾患とは、臓器そのものに炎症や癌などがあり、その結果として様々な症状が出現する病気や病態のことをいう。

1.× 膈兪(※読み:かくゆ)は、上背部、第7胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

2.× 胃兪(※読み:いゆ)は、上背部、第12胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

3.× 大腸兪(※読み:だいちょうゆ)は、腰部、第4腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

4.〇 正しい。中髎は、デルマトームを応用した経穴である。なぜなら、中髎(第3後仙骨孔)と同じ高さに、排便反射の中枢(第2~4仙髄)があるため。
中髎(※読み:ちゅうりょう)は、仙骨部第3後仙骨孔に位置する。

排便の仕組み

①内肛門括約筋は、平滑筋、外肛門括約筋は随意筋よりなる。

②便が肛門の近くまでくると内肛門括約筋が弛緩するが、便が漏れないように随意的に外肛門括約筋を収縮させる。

③腹圧をかけることにより中枢から陰部神経に指令が伝わり、随意筋の外肛門括約筋が弛緩し排便に至る。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

 

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