第27回(H31年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後116~120】

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問題116 東洋医学的な治療方針として、身体を温めるべき症状はどれか。

1.盗汗
2.口苦
3.消穀善飢
4.白色帯下

解答

解説
1.× 盗汗は、陰虚の症状である。
陰虚(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)など。したがって、治療方針は、陰を養う。

2.× 口苦は、肝(単)の病証(熱証)で起こる。
主な症状として、精神抑鬱、急躁、易怒、胸肋部痛、目赤、目のかすみ、舌辺紅、脈弦など。胆の機能失調で口苦・耳鳴・眩暈などである。したがって、治療方針は、湿熱を取り去る。

3.× 消穀善飢は、胃実熱の症状である。
消穀善飢は、食欲旺盛で食べてもすぐに空腹感があるものである。したがって、治療方針は、実熱を取り去る。

4.〇 正しい。白色帯下が、東洋医学的な治療方針として、身体を温めるべき症状である。
陽虚(虚寒)は、寒証+気虚症状である。寒がり、四肢の冷え、顔面蒼白、下痢、白色帯下、腹痛、自汗、倦怠感、息切れ、食欲不振、脈遅・弱などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題117 次の文で示す患者の病証で最も適切なのはどれか。
 「80歳の男性。日頃から腰下肢にだるさがあり、顔や目が赤く、頭や肩に張ったような痛みもあった。昨日、トイレで倒れ、舌が強ばって話しづらくなり、左の上下肢が麻痺した。」

1.肝腎陰虚
2.肝風内動
3.肝陽上亢
4.肝気鬱結

解答

解説

本症例のポイント

・80歳の男性。
・日頃:腰下肢にだるさ、顔や目が赤く、頭や肩に張ったような痛み。
・昨日:トイレで倒れ、舌が強ばって話しづらくなり、左の上下肢が麻痺
→本症例は、肝風内動が疑われる。肝風内動は、眩暈、頭痛、舌の強ばり、片麻痺、手足しびれ、人事不省などである。

1.× 肝腎陰虚
肝腎陰虚とは、肝・腎が陰虚状態であることをさす。陰虚(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)などである。

2.〇 正しい。肝風内動が、患者の病証である。
本症例は、肝風内動が疑われる。肝風内動は、眩暈、頭痛、舌の強ばり、片麻痺、手足しびれ、人事不省などである。

3.× 肝陽上亢(※読み:かんようじょうこう)
肝陽上亢とは、眩暈、耳鳴、頭痛、目赤、陰虚によるほてり・のぼせ、腰膝酸軟などである。

4.× 肝気鬱結(※読み:かんきうっけつ)
肝気鬱結とは、精神的ストレスによる症状をさす。気の巡りが悪く、イライラ、憂うつ、胸脇部の張り、ため息などの症状を呈する。女性では、生理時に乳房が張って痛む、生理痛、生理不順などの症状もみられる。

 

 

 

 

 

問題118 次の文で示す患者の病証に対する治療方針で最も適切なのはどれか。
 「27歳の女性。長時間のVDT作業で目に疲れと乾きを感じる。視力も低下し、疲れがたまると時々手がふるえる。舌質は淡、舌苔は薄、脈は細。」

1.肝血を補う。
2.脾陽を補う。
3.腎陰を補う。
4.肺気を補う。

解答

解説

本症例のポイント

・27歳の女性。
・長時間のVDT作業:目に疲れと乾きを感じる。
・視力も低下、疲れがたまると時々手がふるえる。
・舌質は、舌苔は、脈は
→本症例は、肝血虚が疑われる。肝血虚は、目乾、目花、転筋、しびれ、不眠、多夢、脈細、舌質淡白などがあげられる。

1.〇 正しい。肝血を補う
本症例は、肝血虚が疑われる。肝血虚は、目乾、目花、転筋、しびれ、不眠、多夢、脈細、舌質淡白などがあげられる。

2.× 脾陽を補う。
これは、脾陽虚に対して行われる。ちなみに、脾陽虚は、腹部の冷え、水様便・未消化便、食欲不振、顔面蒼白、畏寒などがあげられる。

3.× 腎陰を補う。
これは、腎陰虚に対して行われる。ちなみに、腎陰虚は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などがあげられる。

4.× 肺気を補う。
これは、肺気虚に対して行われる。ちなみに、肺気虚は、無力な咳嗽・息切れ、倦怠感、鼻汁、痰、易感冒、自汗などがあげられる。

VDT作業とは?

VDT作業とは、ディスプレイを持つ画面表示装置(VDT:Visual Display Terminals) を用いた作業のこと。コンピュータや監視カメラを用いた作業を指す。 VDT作業はVDT症候群のように、心身の負担を感じさせることにつながるため、厚生労働省においても「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」を定めている。

【作業環境管理】
(1)照明及び採光
①室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。
②ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること。また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。
③ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。

(2)一連続作業時間及び作業休止時間
一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けること。

(3)その他
換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所
衛生基準規則に定める措置等を講じること。

(※一部引用:「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題119 次の文で示す患者の病証に対する治療で最も適切なのはどれか。
 「38歳の男性。主訴は鼻閉と鼻汁。鼻汁は黄色く粘りがあり量も多い。日中は頭がぼんやりすることが多く、皮膚掻痒感や嗅覚障害もある。舌質は紅、胖大舌。」

1.太淵に補法を行う。
2.太白に補法を行う。
3.豊隆に瀉法を行う。
4.風門に瀉法を行う。

解答

解説

本症例のポイント

・38歳の男性(主訴:鼻閉鼻汁)。
・鼻汁:黄色く粘り、量も多い。
・日中:頭がぼんやりし、皮膚掻痒感や嗅覚障害もある。
・舌質は紅、胖大舌。
→本症例は、肺の病証が疑われる。特に、痰湿阻肺があげられ、咳嗽(喀痰で軽減)、喀痰、鼻閉、鼻汁、舌質淡紅、舌質白膩などがみられる。痰(痰湿)を除去する作用の強いは、豊隆である。

1.× 太淵(※読み:たいえん)に補法を行う。
難経六十九難に基づく取穴として、太淵は、肺の虚証(補法)である。ちなみに、太淵は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部に位置する。

2.× 太白(※読み:たいはく)に補法を行う。
難経六十九難に基づく取穴として、太白は、肺の虚証(補法)である。ちなみに、太白は、足内側、第1中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際に位置する。

3.〇 正しい。豊隆(※読み:ほうりゅう)に瀉法を行う
本症例は、肺の病証が疑われる。特に、痰湿阻肺があげられ、咳嗽(喀痰で軽減)、喀痰、鼻閉、鼻汁、舌質淡紅、舌質白膩などがみられる。痰(痰湿)を除去する作用の強いは、豊隆である。ちなみに、豊隆は、下腿前外側、前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸に位置する。

4.× 風門(※読み:ふうもん)に瀉法を行う。
足の太陽膀胱経である風門は、上背部、第2胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

難経六十九難に基づく取穴

【部位】虚証(補法):実証(瀉法)
【肝】曲泉・陰谷:行間・少府・労宮
【肺】太淵・太白:尺沢・陰谷
【心】少衝・大敦:神門・太白
【腎】復溜・経渠:湧泉・大敦
【脾】大都・少府・労宮:商丘・経渠
【心包】中衝・大敦:大陵・太白
【胆】侠渓・足通谷:陽輔・陽谷・支溝
【大腸】曲池・足三里:二間・足通谷
【小腸】後渓・足臨泣:小海・足三里
【膀胱】至陰・商陽:束骨・足臨泣
【胃】解渓・陽谷・支溝:厲兌・商陽
【三焦】中渚・足臨泣:天井・足三里

 

 

 

 

 

問題120 次の文で示す患者の病証に対する治療穴として、経脈の異常に基づく選穴で最も適切なのはどれか。
 「60歳の男性。主訴は右上の歯茎の痛み。長期間ストレスが続き、3日前から胸焼けとともに歯茎が腫れて軽く噛み合わせても痛む。脈は右関上が浮滑。」

1.上関
2.内庭
3.觀髎
4.合谷

解答

解説

本症例のポイント

・60歳の男性(主訴:右上の歯茎の痛み)
・長期間ストレスが続く。
・3日前:胸焼け、歯茎が腫れて、軽く噛み合わせても痛む
・脈:右関上が浮滑。
→本症例は、足の陽明胃経の不調が疑われる。足の陽明胃経は、顔面神経麻痺、喉や膝の皿が腫れたり痛んだりする。胃腸が張る。気衝~髀関、足の甲と流注上に痛みや熱感が出る。食べても食べてもお腹が空き、濃黄色の小便が出る。びっくりして不安な状態になる。独り塞ぎこんで窓を閉め家の中に閉じこもっている。高い所に登って歌を歌いだす。羞恥心を無くしたように裸になって走り出す。また、六部定位脈診によると、脈が右関上に浮滑である場合、である。

1.× 上関(※読み:じょうかん)
足の少陽胆経である上関は、頭部、頬骨弓中央の上際陥凹部に位置する。別名として、客主人といい、頻骨弓をはさんで、下関(胃経)の直上にあたる。

2.〇 正しい。内庭が、経脈の異常に基づく選穴である。
足の陽明胃経である内庭(※読み:ないてい)は、足背、第2~3足指間、みずかきの後縁、赤白肉際に位置する。

3.× 觀髎(※読み:けんりょう)
手の太陽小腸経である顴髎は、顔面部、外眼角の直下、頬骨下方の陥凹部に位置する。下関(胃経)の前方にあたる。

4.× 合谷(※読み:ごうこく)
手の陽明大腸経である合谷は、手背、第2中手骨中点の橈側に位置する。

六部定位脈診

【部位】
①左:浮・沈
寸:小腸・心
関:胆・肝
尺:膀胱・腎

②右:浮・沈
寸:大腸・肺
関:・脾
尺:三焦・心包

 

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