第27回(H31年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後81~85】

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専門基礎科目

問題81 呼吸補助筋はどれか。

1.三角筋
2.大菱形筋
3.頭板状筋
4.胸鎖乳突筋

解答

解説

呼吸運動について

①安静吸気:横隔膜・外肋間筋。
②安静呼気:呼気筋は関与しない。
③努力吸気:呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与。
④努力呼気:内肋間筋・腹横筋・腹直筋が関与。

1.× 三角筋
三角筋の【起始】肩甲棘、肩峰、鎖骨の外側部1/3、【停止】上腕骨三角筋粗面、【作用】肩関節外転、前部は屈曲、後部は伸展、【支配神経】腋窩神経:(C4),C5,C6である。

2.× 大菱形筋
菱形筋には、大菱形筋と小菱形筋がある。菱形筋の神経は、肩甲背神経である。ちなみに、大菱形筋の【起始】第2~4胸椎の棘突起および棘上靭帯、【停止】肩甲骨内側縁(肩甲棘より下部)である。また、小菱形筋の【起始】下部項靭帯、第7頸椎と第1胸椎の棘突起、【停止】肩甲骨内側縁(肩甲棘より上部)である。

3.× 頭板状筋
脊柱起立筋は、腸肋筋、最長筋、棘筋があげられる。ちなみに、頭板状筋の作用は、「片側が働けば頭と頚をその側に回転し、かつその方向に傾ける。両側が同時に働けば頭と頚を後ろに反らせる(背屈)。」である。つまり、頭頸部の伸展、頚部の同側側屈、同側回旋である。

4.〇 正しい。胸鎖乳突筋は、呼吸補助筋である。
胸鎖乳突筋の【起始】胸骨部:胸骨柄前面、鎖骨部:鎖骨の胸骨端、【停止】乳様突起、後頭骨の上項線の外側部、【作用】両側が同時に作用すると首をすくめて顎を突き出す。片側が働けば顔面を対側に回す。吸息の補助、【支配神経】副神経外枝、頸神経叢筋枝(C2,C3)である。

 

 

 

 

 

問題82 球麻痺の原因となる病巣はどれか。

1.延髄
2.海馬
3.前頭葉
4.小脳半球

解答

解説
1.〇 正しい。延髄は、球麻痺の原因となる病巣である。
球麻痺とは、延髄にある神経核が障害された状態を指し、舌咽・迷走・舌下神経が障害される。したがって、嚥下・構音障害、舌萎縮、線維束攣縮などがみられる。

2.× 海馬
海馬とは、記憶を司っている部位である。

3.× 前頭葉
前頭葉とは、論理的思考を制御する領域である。前頭葉障害の主症状として、①遂行機能障害、②易疲労性、③意欲・発動性の低下、④脱抑制・易怒性、⑤注意障害、⑥非流暢性失語等が挙げられる。

4.× 小脳半球
小脳半球(新小脳)は、四肢(特に上肢)の協調運動を司っている(失調性歩行、企図振戦、構音障害など)。失調性歩行は、ワイドベースや酩酊歩行、よろめき歩行ともいう。

中脳と橋、延髄にある脳神経核

【中脳】
Ⅲ:動眼
Ⅳ:滑車

【橋】
Ⅴ:三叉
Ⅵ:外転
Ⅶ:顔面
Ⅷ:前庭

【延髄】
Ⅸ:舌咽神経
Ⅹ:迷走神経
Ⅺ:副神経
Ⅻ:舌下神経

 

 

 

 

 

問題83 C7完全麻痺の脊髄損傷者が目標とするADLとして正しいのはどれか。

1.人工呼吸器からの離脱
2.BFOによる食事動作の自立
3.車椅子駆動の自立
4.歩行の獲得

解答

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

1.× 人工呼吸器からの離脱は、C4で可能となる。
C1〜C3の損傷では、頭部の前屈回転は可能であるが、「呼吸筋の完全麻痺」となっており、よって人工呼吸器の使用が必要となる。自発呼吸が行えるのは、第4頚髄節(C4)の機能残存である。

2.× BFOによる食事動作の自立は、C5で可能となる。
BFO(balanced forearm orthosis:非装着式上肢装具)は、前腕を支持することにより、上肢の重さを軽減させ、弱い力で上肢の動きを引き出す自助具である。

3.〇 正しい。車椅子駆動の自立は、C7完全麻痺の脊髄損傷者が目標とするADLである。
第7頸髄節の運動機能は、上腕三頭筋と橈側手根屈筋まで可能である。移動は車椅子駆動で、自動車の運転も可能となる。プッシュアップとベッドの側方移動が可能となり、車椅子にて日常生活のほとんどが自立まで至る。

4.× 歩行の獲得は、T10以下で可能となる。
第10胸髄節の機能残存レベルでは、下肢の麻痺および臍より下部の感覚消失があり、歩行は困難である。RGO(Reciprocating Gait Orthosis:交互歩行装具)は、第10胸髄節以下の完全対麻痺者の交互歩行実現を目的として開発された装具である。第12胸髄節の機能残存レベルでは、下肢の付け根(鼠径部)より下部の麻痺および感覚の消失があり、両短下肢装具を用いての歩行は困難である。長下肢装具とクラッチを使用し歩行を試みるレベルである。ちなみに、両短下肢装具を用いての歩行は、大腿四頭筋が働く第3腰髄節(L3)の機能残存からである。

 

 

 

 

 

問題84 血管障害による下腿切断について正しいのはどれか。

1.早期からの断端圧迫は禁忌である。
2.非切断側の血流障害を評価する必要はない。
3.切断直後に幻肢痛を生じる。
4.糖尿病性足部壊疽は原因となる。

解答

解説
1.× 早期からの断端圧迫は、「禁忌」ではなく適応である。
断端部の圧迫は、圧迫療法といい、断端周り全体に圧をかける目的は断端の腫れを軽減し、後々義手の装着ができるように断端の形状を整えることが図れる。また、加圧することで、断端の血液循環が良くなるため、断端部の痛みが軽減し、傷の治癒も促進される。

2.× 非切断側の血流障害を評価する必要がある
なぜなら、血管障害による下腿切断患者は、非切断側も少なからず血流障害をきたしやすい状況であるため。例えば、糖尿病の壊死(壊疽)などが原因としてあげられる。壊疽とは、壊死の一種であり、感染症あるいは血栓症などによる壊死に陥った部分が腐敗・融解をきたしている状態のことをいう。

3.× 切断直後に幻肢痛を生じるとはいいきれない
幻視痛は、一般的に、切断の手術後1週間以内に発症し、6か月~2年で消失することが多い。

4.〇 正しい。糖尿病性足部壊疽は原因となる
特に動脈硬化症に関連して発症する場合が多く、糖尿病や慢性腎臓病、脂質代謝異常症などの基礎疾患や生活習慣の悪化(喫煙、食事の欧米化)により多く発症することが知られている。

幻肢・幻肢痛とは?

幻肢・幻肢痛とは、腕や足の切断後、失ったはずの感覚があり、かつそこに痛みを感じる状態である。切断をした人の約7割で生じるが、強い痛みは5~10%とまれである。幻肢痛のメカニズム(発生の機序)は解明されていない。下肢より上肢、近位部より遠位部に多く、電撃痛や、捻られるような痛み、ズキズキするような痛みなど様々である。一般的に、切断の手術後1週間以内に発症し、6か月~2年で消失することが多いが、それ以上長引くこともある。幻肢の大きさは健肢とほぼ同様で、幻肢痛が発生するのは、失った手や指、足などが多い。一方、肘や膝に感じることはまれで、4~6歳以下の小児切断例では出現しないことが多い。幻肢痛への一般的な治療方法として、薬物療法と非薬物療法に分けられる。幻肢痛は天候や精神的ストレスに左右されるため、薬物療法は、鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン)、三環系抗うつ薬抗痙攣薬、プレガバリン(リリカ)などの抗てんかん薬が、神経痛の治療に使われる。非薬物療法としては、ミラーセラピーである。幻肢は断端の運動につれて移動し、断場の状態(神経や癒着など)に関連を持つ場合がある。

※幻視痛は、心因性の要素が関係するため薬物療法以外の治療法 (バイオフィードバック、リラクセーション訓練、認知行動療法、経皮的電気神経刺激法【TENS】 など)も用いられる。ちなみに、ミラーセラピー(mirror therapy)とは、鏡を使用して運動の視覚フィードバックを与える治療法である。矢状面で両肢間に鏡を設置し、鏡に映された一側肢が鏡に隠れた反対側肢の位置と重なるようにする。切断や麻痺などの患側肢の遠位部に健側肢の映った鏡像がつながって見えることで、患側肢が健常な実像であるかのように感じさせながら運動を行う。

(※参考:「幻肢痛」慢性通治療の専門医による痛みと身体のQ&A様HPより)

 

 

 

 

 

問題85 痙性麻痺がある脳性麻痺患者に対してよく行われる治療はどれか。

1.向精神薬投与
2.頸椎除圧固定術
3.ボツリヌス療法
4.人工膝関節置換術

解答

解説

痙直型脳性麻痺の特徴

脳性麻痺とは、お腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す。失調型やアテトーゼ型などのタイプがある。

痙直型脳性麻痺の場合、股関節が屈曲・内転・内旋しやすく、尖足になりやすい。痙直型の特徴として、①機敏性の低下、②筋力低下、③脊髄反射の亢進などである。それらに加えて、脊髄レベルでの相反神経作用の障害として、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収縮や痙直の強い拮抗筋からの過剰な緊張性相反性抑制による④動筋の機能不全がみられる。

1.× 向精神薬投与
向精神薬とは、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠導入剤(睡眠薬)など薬の総称である。

2.× 頸椎除圧固定術
主に、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアなどで、神経を圧迫している部分が、脊髄や神経根よりも首の前の方にある場合が適応となる。

3.〇 正しい。ボツリヌス療法は、痙性麻痺がある脳性麻痺患者に対してよく行われる治療である。
ボツリヌス療法は、脳・脊髄疾患などによる痙性麻痺に対して有効とされている。ボツリヌス毒素を筋肉内に数か所注射し、筋収縮を抑制する。効果持続は、3~6か月のため、数か月ごとに再投与が必要である。ボツリヌス毒素が神経終末の受容体に結合することで、アセチルコリンの放出を阻害し、アセチルコリンを介した筋収縮および発汗が阻害される。なお、アセチルコリンの合成や貯蔵、神経伝導には影響を及ぼさない特徴を持つ。

4.× 人工膝関節置換術
人工膝関節置換術とは、変形性膝関節症や関節リウマチによって傷んで変形した膝関節の表面を取り除いて、人工関節に置き換える手術である。

 

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