第27回(H31年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後86~90】

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問題86 心臓リハビリテーションにおける運動負荷試験の中止基準として正しいのはどれか。

1.疲労
2.息切れ
3.筋肉痛
4.チアノーゼ

解答

解説

急性心筋梗塞に対する急性期リハビリテーション負荷試験の判定基準

①胸痛・動悸・呼吸困難などの自覚症状が出現しないこと。
②心拍数が120/分以上にならないこと。または40/分以上増加しないこと。
③危険な不整脈が出現しないこと。
④心電図上1mm以上(0.2mV以上)の虚血性ST低下、または著明なST上昇がないこと。
⑤室内便器使用時までは20mmHg以上の収縮期血圧上昇・低下がないこと。
(2週間以上経過した場合、血圧に関する基準は設けない)

(引用:「2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」日本循環器学会様より)

1~3.× 疲労/息切れ/筋肉痛
これらは、中止基準とはいえない。ただし、リハビリテーションの中止基準の「途中でリハを中止する場合」に疲労感が含まれているため、状況に応じた判断が必要となる。

4.〇 正しい。チアノーゼは、心臓リハビリテーションにおける運動負荷試験の中止基準である。
なぜなら、チアノーゼは呼吸困難症状の一つであり、選択肢の中で最も危険な状態であるため。チアノーゼとは、皮膚や粘膜が青紫色である状態をいう。 一般に、血液中の酸素が不足することをきっかけとし、 血液中の酸素濃度が低下した際に、爪床や口唇周囲に表れやすい。

リハビリテーションの中止基準

1. 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍 40/分以下または 120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下

2. 途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合
[2] 脈拍が 140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化

3. いったんリハを中止し,回復を待って再開
[1] 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
[2] 脈拍が 120/分を越えた場合
[3] 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
[4] 軽い動悸,息切れが出現した場合

 

 

 

 

 

問題87 変形性膝関節症に対する運動療法で最も適切なのはどれか。

1.階段昇降
2.水中歩行
3.ジョギング
4.自転車エルゴメーター

解答

解説

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。

1.3.× 階段昇降/ジョギングより優先度が高いものが他にある。
なぜなら、すでに変形性膝関節症で膝痛や大腿四頭筋の筋力低下をきたしている場合は、運動自体が困難であるため。また続けられにくいと考える。階段昇降やジョギングよりもウォーキングの方が望ましい。

2.〇 正しい。水中歩行は、変形性膝関節症に対する運動療法である。
なぜなら、水中歩行は、膝の負担があまりかからずに、減量や全身運動が可能であるため。

4.× 自転車エルゴメーターより優先度が高いものが他にある。
なぜなら、一般的に自転車エルゴメーターは適応であるが、変形性膝関節症の患者全員が適応になるとはいいにくいため。例えば、変形性膝関節症の末期で膝を動かすと疼痛が発生する場合は、自転車エルゴメーターは困難である。自転車エルゴメーターか水中歩行かどちらが多くの変形性膝関節症に適応となるか?と問われれば、水中歩行の方が多いと考える。

 

 

 

 

 

問題88 パーキンソン病の歩行障害に対する訓練で最も有効なのはどれか。

1.つぎ足歩行訓練
2.松葉杖を用いた歩行訓練
3.両長下肢装具を用いた歩行訓練
4.メトロノームによるリズム歩行訓練

解答

解説

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

1.× つぎ足歩行訓練は、バランス機能が低下している場合に用いられる。
つぎ足歩行とは、タンデム歩行ともいい、踵とつま先を交互に接触させて直線上を歩行することである。バランス能力の検査(体幹や下肢の運動失調の検査)で用いられることが多い。

2.× 松葉杖を用いた歩行訓練は、下肢に体重をかけられない場合に用いられる。
2本の松葉杖で身体を支えることができるため、体重をかけないようにする事が目的である。

3.× 両長下肢装具を用いた歩行訓練は、重度の弛緩性麻痺の場合に用いられる。
長下肢装具は、立位訓練開始から装具をつけ、介助下での平行棒な歩行訓練が必要なレベルの重度の麻痺に適応となる。臨床では、重度弛緩性麻痺時には長下肢装具で立位練習を行い、股関節の収縮が得られてきた際に、短下肢装具へ移行しながら練習することが多い。

4.〇 正しい。メトロノームによるリズム歩行訓練は、パーキンソン病の歩行障害に対する訓練で最も有効である。なぜなら、パーキンソン病は矛盾性運動(逆説的運動)が当てはまるため。矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

松葉杖とは?

2本の松葉杖で身体を支えることができるため、体重をかけないようにする事が目的である。松葉杖のそれぞれの下端を靴の脇約5cm、つま先の前方15cmのところに突き、上端が腋窩から指2~3本分(約5cm)下にくるように松葉杖の長さを調整する。ハンドグリップは肘が20°~30曲がる位置に来るよう調節する。

【松葉杖の適応】
・片方の下肢骨折
・対麻痺障害などの立位保持が困難な場合
・荷重負荷制限
・上腕の筋力が十分であること

【免荷】
1/2~1/3部分免荷:両松葉杖
2/3~3/4部分免荷:片松葉杖
3/4部分荷重以上:T字杖

 

 

 

専門科目

問題89 気について正しいのはどれか。

1.宗気は臍下丹田に集まる。
2.原気は津液を血に変化させる。
3.衛気は臓腑を温める。
4.営気は呼吸を推動する。

解答

解説
1.× 宗気は、「臍下丹田」ではなく胸中に集まる。
臍下丹田に集まるのは、「宗気」ではなく原気である。ちなみに、宗気とは、呼吸で得られる気(水穀の精微と精気)によって化生された気である。胸中に集まり、心肺の活動(呼吸・血の推動)を支える。

2.× 津液を血に変化させるのは、「原気」ではなく営気である。
原気とは、元気ともいい、先天の精を源とし、生命活動の原動力となる気である。三焦を通って、全身に分布し、臓腑の生理活動を始動させる。

3.〇 正しい。衛気は臓腑を温める
衛気とは、体表(昼)と体内(夜)をめぐる活動性の高い気のことである。全身を温め、腠理の開闔により、発汗を調節し、外邪の侵襲を防ぐ。つまり、脈外をめぐる。

4.× 呼吸を推動するのは、「営気」ではなく宗気である。
営気とは、津液を血に変化させ、脈中を巡らせる。豊かな栄養分により組織・器官の活動を支える気である。

 

 

 

 

 

問題90 五行色体で相剋関係にある組合せはどれか。

1.酸:鹹
2.面色:毛
3.汗:涎
4.久坐:久臥

解答

解説

五行相剋とは?

五行相剋とは、水・火・金・木・土の五つの根元要素が互いに力を減じ合い、水は火に、火は金に、金は木に、木は土に、土は水に勝つという考え方である。
木剋土、土剋水、水剋火、火剋金、金剋木。

1.× 酸:鹹
酸は、五味の「木」である。
鹹は、五味の「水」である。

2.〇 正しい。面色:毛
面色は、五華の「」である。
毛は、五華の「」である。

3.× 汗:涎
汗は、五液の「火」である。
涎は、五液の「土」である。

4.× 久坐:久臥
久坐は、五労の「土」である。
久臥は、五労の「金」である。

 

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