第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後156~160】

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問題156 デルマトームを考慮した体性‒自律神経反射を利用して下痢の灸治療を行う場合、最も効果が期待できるのはどれか。

1.梁門
2.帰来
3.脾兪
4.足三里

解答or
選択肢2.帰来のほうが、下腹部(大腸)であるため有効と考えられる。

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

MEMO

体性‒自律神経反射:鍼灸による内臓機能の調整などである。体性‒自律神経反射を利用して下痢の灸治療を行う場合、小腸や大腸のT9~L1に対応する経穴が対象となる。

1.× 梁門(※読み:りょうもん)
梁門は、上腹部、腈中央の上方4寸、前正中線の外方2寸に位置する。

2.〇 正しい。帰来が、下痢の灸治療を行う場合、効果が期待できる。
帰来(※読み:きらい)は、下腹部、臍中央の下方4寸、前正中線の外方2寸に位置する。腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋の治療穴である。

3.〇 正しい。脾兪が、下痢の灸治療を行う場合、効果が期待できる。
脾兪(※読み:ひゆ)は、上背部、第11胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

4.× 足三里(※読み:あしさんり)
足三里は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。前脛骨筋の治療穴である。

 

 

 

 

 

問題157 透熱灸の施灸局所で発痛を増強するのはどれか。

1.ヒスタミン
2.ブラジキニン
3.CGRP
4.プロスタグランジン

解答or

解説

透熱灸とは?

有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

発痛物質には、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン、アセチルコリン、プロスタグランジンなどがある。

1.〇 正しい。ヒスタミンは、透熱灸の施灸局所で発痛を増強する。
ヒスタミンとは、酸素が不足すると細胞から放出される「発痛物質」の1つである。また、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

2.× ブラジキニン
ブラジキニンとは、生理活性ペプチドともいい、炎症やアレルギー反応に関与する。発痛作用、血管拡張(血圧降下作用)、血管透過性亢進といったさまざまな作用をもつ。ブラジキニンは、プロテアーゼの作用により血漿中のグロブリン前駆体から生成される物質である。

3.× CGRP
軸索反射(フレア現象)の神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。CGRPとは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドのことで、片頭痛の痛みの直接の原因とされているタンパク質である。脊髄後根神経節で産生され、中枢および末梢の両側性に作用する。末梢血管を著しく拡張させ、血管透過性を亢進させる働きを持つ。

4.〇 正しい。プロスタグランジンは、透熱灸の施灸局所で発痛を増強する。
プロスタグランジンとは、子宮の内膜がはがれ落ちるときに増え、子宮を収縮させて、血液(経血)を押し出すはたらきがある。プロスタグランジンが過剰につくられると、子宮が激しく収縮するので、月経痛がひどくなる。また、一般的に、プロスタグランジンとは、細菌感染による急性炎症反応で増加する。プロスタグランジンは、①血管拡張、②気管支平滑筋収縮、③急性炎症時の起炎物質で発痛作用がある。非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。したがって、非ステロイド性抗炎症薬が効果的であるのは、侵害受容性疼痛である。

 

 

 

 

 

問題158 施灸局所の肥満細胞から放出される血管透過性亢進物質はどれか。

1.IgE
2.補体
3.ヒスタミン
4.ブラジキニン

解答

解説
1.× IgE
IgEとは、肥満細胞や好塩基球の細胞表面に存在している。ヒスタミン遊離によりアレルギー疾患を引き起こす。生後6か月以降の乳幼児では、しばしばアトピー性アレルギー疾患の進行に伴って血清中のIgE抗体が上昇する。したがって、I型反応(即時型、アナフィラキシー型)のアレルギー反応に関与する。

2.× 補体
補体とは、免疫反応を媒介する血中タンパク質の一群で、動物血液中に含まれる。補体は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を攻撃し、体内から排除する働きがある。

3.〇 正しい。ヒスタミンは、施灸局所の肥満細胞から放出される血管透過性亢進物質である。ヒスタミンとは、酸素が不足すると細胞から放出される「発痛物質」の1つである。また、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

4.× ブラジキニン
ブラジキニンとは、生理活性ペプチドともいい、炎症やアレルギー反応に関与する。発痛作用、血管拡張(血圧降下作用)、血管透過性亢進といったさまざまな作用をもつ。ブラジキニンは、プロテアーゼの作用により血漿中のグロブリン前駆体から生成される物質である。

 

 

 

 

 

問題159 広汎性侵害抑制性調節(PNIC)が最も関与するのはどれか。

1.合谷に透熱灸を行い歯痛が緩和した。
2.足三里に七分灸を行い胃痛が緩和した。
3.大腸兪にショウガ灸を行い腰痛が改善した。
4.梁丘に温筒灸を行い膝痛が改善した。

解答

解説

広汎性侵害抑制性調節(PNIC)

侵害刺激が痛みを抑制する現象で全身性に効果が出る。Ⅲ・Ⅳ群線維の興奮で作動する。効果は刺激開始と同時に発現する。下行性ニューロンが脊髄後角細胞を抑制する。つまり、痛みを痛みで上乗せして痛みを抑制する作用である。

1.〇 正しい。合谷に透熱灸を行い歯痛が緩和した
広汎性侵害抑制性調節(PNIC)が最も関与する。合谷(※読み:ごうこく)は、手背、第2中手骨中点の橈側に位置する。有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

2.× 足三里に七分灸を行い胃痛が緩和したのは、「上行性自律神経反射」が考えられる。
足三里(※読み:あしさんり)は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。無痕灸である知熱灸は、半米粒~米粒大の艾炷に点火し、患者の気持ちの良い所で消火もしくは取り除く方法である。8割燃焼を八分灸ということもある。

3.× 大腸兪にショウガ灸を行い腰痛が改善したのは、「軸索反射」が考えられる。
大腸兪(※読み:だいちょうゆ)は、腰部、第4腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。ショウガ灸は、隔物灸のひとつで、艾炷と皮膚の間に物を置いて施灸する方法である。塩灸、韮灸、墨灸、ニンニク灸、味噌灸、生姜灸、ビワの葉灸、押灸などがある。

4.× 梁丘に温筒灸を行い膝痛が改善したのは、「軸索反射」が考えられる。
梁丘(※読み:りょうきゅう)は、大腿前外側、外側広筋と大腿直筋腱外縁の間、膝蓋骨底の上方2寸に位置する。温灸は、艾を皮膚から距離を置いて燃焼させ、輻射熱で温熱刺激を与える方法である。棒灸、温灸器、温筒灸、艾条灸などがある。

MEMO

軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

 

 

 

 

 

問題160 施灸後早期に貪食能の活性が亢進すると考えられるのはどれか。

1.T細胞
2.好中球
3.線維芽細胞
4.マクロファージ

解答

解説

貪食能の活性の亢進

施灸後早期:好中球

施灸5日後:マクロファージ

1.× T細胞
T細胞とは、血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種である。胸腺(thymus)でつくられるため、頭文字を取ってT細胞と名付けられた。T細胞は膠原特異的な免疫応答である獲得免疫に関与する。免疫応答を促進するヘルパーT細胞、逆に免疫反応を抑制するサプレッサーT細胞、病原体に感染した細胞や癌細胞を直接殺すキラーT細胞などに分類される。

2.〇 正しい。好中球は、施灸後早期に貪食能の活性が亢進すると考えられる。
好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。

3.× 線維芽細胞
線維芽細胞とは、真皮線維芽細胞ともいい、皮膚の真皮にある細胞である。肌の元となる成分(コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸)を作り出す役割を担う。細胞分裂周期が早く、古くなったら分解し細胞分裂によって絶えず新しい線維芽細胞を増やし続けている。

4.× マクロファージ
マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。

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