第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前26~30】

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問題26 ビタミンについて正しいのはどれか。

1.ビタミンAはエネルギー源となる。
2.ビタミンB12の摂取不足で脚気となる。
3.ビタミンCはコラーゲン生成に関与する。
4.ビタミンKは骨の構成成分となる。

解答

解説

MEMO

ビタミンKとは、数種類の凝固因子の産生に必要な補助因子である。そのため、ビタミン K が欠乏すると消化管出血だけでなく、重症例では頭蓋内出血などを合併し、死亡する場合もある。

1.× エネルギー源となるのは、「ビタミンA」ではなくビタミンB1である。
ビタミンAとは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、目や皮膚の粘膜を健康に保ち、抵抗力を強める役割があり、暗いところでの視力を保つ働きがある。

2.× 摂取不足で脚気となるのは、「ビタミンB12」ではなくビタミンB1である。
ビタミンB1とは、チアミンとも呼ばれる水溶性のビタミンで、解糖系やクエン酸回路のエネルギー代謝の一部で補酵素として関わる。ビタミンB1(チアミン)欠乏症では、①末梢神経の症状として脚気、②中枢神経の症状としてKorsakoff症候群(コルサコフ症候群)が生じる。Korsakoff症候群(コルサコフ症候群)の特徴的な症状は、①健忘、②記銘力低下、③見当識障害、④作話である。ビタミンB1の欠乏による脳障害が原因であり、治療はビタミンB1の投与である。完治しにくく後遺症を残す可能性が高い。

3.〇 正しい。ビタミンCはコラーゲン生成に関与する
ビタミンC欠乏で、壊血病となる。壊血病は、結合組織の異常から毛細血管が脆弱化して出血しやすくなる。

4.× 骨の構成成分となるのは、「ビタミンK」ではなくビタミンDである。
ビタミンDの働きは、腸管からのカルシウムの吸収や骨・筋の同化作用などである。したがって、ビタミンD欠乏は、小児ではくる病、成人では骨軟化症や骨粗鬆症をきたす。ちなみに、くる病とは、小児期に見られる骨の石灰化不全であり、主に成長障害と骨の弯曲が起こる疾患である。ビタミンDの代謝あるいは感受性の障害により、骨に石灰化が起こらず、強度が不足する病気である。 成人期ではビタミンD依存性骨軟化症と呼ばれる。小児期には成長も障害され、骨X線検査で特徴的な所見を呈し、ビタミンD依存性くる病とも呼ばれる。

MEMO

ビタミンB欠乏(ビタミンB12欠乏)で、悪性貧血となる。悪性貧血とは、ビタミンB12または葉酸の欠乏によって生じる巨赤芽球性貧血の中である。最も発生頻度が高いビタミンB12欠乏性の貧血が悪性貧血である。ビタミンB12は胃液中の内因子との結合によって小腸下部で吸収され、葉酸とともに骨髄内での赤血球生成に利用される。悪性貧血は、高度の萎縮性胃炎による内因子分泌の欠乏が一次的原因である。その結果、回腸末端部からのビタミンB12の吸収障害をおこす。欠乏症状として①動悸、②めまい、③耳鳴り、④全身倦怠感、⑤舌炎、⑥悪心、⑦嘔吐、⑧下痢、⑨神経症状として四肢の知覚異常、⑩歩行困難、⑪視力障害などがおこる。時には興奮,軽い意識混濁などの精神障害をきたすこともある。

 

 

 

 

 

問題27 ステロイドホルモンはどれか。

1.サイロキシン
2.アドレナリン
3.コルチゾール
4.ゴナドトロピン

解答

解説

副腎とは?

副腎皮質から、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などが分泌される。コルチゾールは、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

①球状帯:電解質コルチコイド(アルドステロン)を産生する。皮膜直下の薄い層で、皮質細胞が球状の塊を形成する。
②束状帯:糖質コルチコイド(コルチゾール)を産生する。最も厚い層で、細胞は縦に並び、細胞索を形成する。その間を洞様毛細血管が髄質に向かって走行する。
③網状帯:アンドロゲンを産生する。皮質の最深部で、網状をなす細胞索からなる。

1.× サイロキシン
甲状腺ホルモンとは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があり、新陳代謝を調節しているため。脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保つ働きがある。

2.× アドレナリン
アドレナリンとは、腎臓の上にある副腎髄質で合成・分泌されるホルモンである。主な作用は、心拍数や血圧上昇などがある。自律神経の交感神経が興奮することによって分泌が高まる。

3.〇 正しい。コルチゾールは、ステロイドホルモンである。
コルチゾールとは、副腎皮質で合成・分泌されるホルモンで、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがある。過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

4.× ゴナドトロピン
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human chorionic gonadotropin)とは、妊娠中にのみ測定可能量が著しく産生されるホルモンであり、妊娠の早期発見や自然流産や子宮外妊娠といった妊娠初期によくみられる異常妊娠の診断と管理のために使用される。主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしている。また、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用がある。絨毛性腫瘍の他に、子宮、卵巣、肺、消化管、膀胱の悪性腫瘍においても異所性発現している例もある。

 

 

 

 

 

問題28 性周期について正しいのはどれか。

1.排卵に先立って黄体ホルモンの分泌が急激に増加する。
2.卵胞ホルモンの作用により子宮内膜が増殖する。
3.子宮内膜の増殖期が終了すると月経期となる。
4.子宮内膜の分泌期には卵胞が成熟する。

解答

解説

(※画像引用:日本医師会様HPより)

エストロゲンとは?

エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

1.× 排卵に先立って、「黄体ホルモン」ではなくエストロゲンの分泌が急激に増加する。
プロゲステロン(黄体ホルモン)は、妊娠後期にかけ徐々に増加する。プロゲステロン(黄体ホルモン)とは、妊娠の準備のため基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を安定させ、乳腺を発達させる働きがある。また栄養や水分を体にたくわえようとするため浮腫や体重増加しやすい。妊娠が成立しなければ、排卵の1週間後くらいから黄体ホルモン(プロゲステロン)は減り始め、さらに1週間くらい経つと子宮内膜がはがれ月経が始まる。

2.〇 正しい。卵胞ホルモンの作用により子宮内膜が増殖する
子宮内膜の増殖は、卵胞ホルモン(エストロゲン)の作用による。排卵した後、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の作用によって子宮内膜はさらに厚みを増し、受精卵の受け入れ体制を整える。

3.× 子宮内膜の増殖期が終了すると「月経期」ではなく分泌期となる。
分泌期は、子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期のことをいう。一方、月経期とは、出血が始まってから終わるまでの期間をさす。

4.× 卵胞が成熟するのは「子宮内膜の分泌期」ではなく増殖期である。
増殖期は、女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期である。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。

月経周期

・卵胞期:1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期。
・増殖期:女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。
・黄体期:排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期。
・分泌期:子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期。

 

 

 

 

 

問題29 β受容体の刺激で起こるのはどれか。

1.気管支平滑筋の収縮
2.心拍数の増加
3.胃平滑筋の収縮
4.外肛門括約筋の弛緩

解答

解説

MEMO

β(1)受容体の刺激
→心臓の陽性変性作用が起こる。

【α作用とβ作用について】
・α1作用:主に血管収縮
・α2作用:ノルアドレナリン放出抑制によるネガティブフィードバック
・β1作用:心臓の陽性変性作用
・β2作用:血管、気管支の弛緩

1.3.× 気管支平滑筋の収縮/胃平滑筋の収縮
これらは、副交感神経優位の働きで起こる。つまり、β受容体抑制で起こる。

2.〇 正しい。心拍数の増加は、β受容体の刺激で起こる。
β受容体の刺激により、心臓の陽性変性作用が起こる。心臓の陽性変時作用とは、交感神経が心拍数を増加させる作用のことである。

4.× 外肛門括約筋の弛緩は、β受容体の刺激との関連性が低い。
なぜなら、β受容体は、血管や心臓に作用するため。ちなみに、外肛門括約筋とは、内肛門括約筋を外側から筒状に取り囲むように存在する随意筋かつ横紋筋である。体性神経である下直腸神経・会陰神経の支配を受けている。外肛門括約筋の弛緩が起こって排便が起こる(排便反射)。つまり、お尻の穴の排便の時に働く筋肉である。

 

 

 

 

 

問題30 骨格筋の収縮について誤っているのはどれか。

1.収縮に先立って活動電位が生じる。
2.アクチンフィラメントが短縮する。
3.カルシウムイオンが必要である。
4.ATPが消費される。

解答

解説

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

1.〇 収縮に先立って活動電位が生じる。
筋肉が収縮するメカニズムは、活動電位が発生し、横行小管が脱分極し、筋小胞体からカルシウムイオンが放出されることによって起こる。カルシウムイオンの濃度が上昇すると、トロポニンCと結合し、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが相互作用して、骨格筋が収縮する。

2.× アクチンフィラメントが「短縮」ではなく引き寄せる
アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

3.〇 カルシウムイオンが必要である。
筋収縮の機序として、まず、筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する必要がある。

4.〇 ATPが消費される。
なぜなら、頭部首振り運動に、ATPエネルギーを利用する必要があるため。

 

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