第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前51~55】

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問題51 骨化性筋炎の原因はどれか。

1.脊髄損傷
2.エストロゲン製剤の服用
3.意識障害を伴う脳障害
4.筋挫傷後の無理な可動域訓練

解答

解説

骨化性筋炎とは?

骨化性筋炎とは、打撲などの外傷によって、筋肉の中に骨と同じような組織ができてしまう疾患のことである。外傷性骨化性筋炎、骨化性筋炎とも言う。 損傷を受けた筋肉が出血して血腫ができたところに、カルシウムが沈着し、石灰化しておこる。大腿部前面に強い打撲を受けた後によくみられる。

1.× 脊髄損傷
脊髄損傷では、運動麻痺、感覚障害、自律神経障害、排尿・排便障害など、さまざまな障害が発症する。障害された神経根レベルで症状が異なる。

2.× エストロゲン製剤の服用
エストロゲン製剤の服用による合併症には、乳房の張りや痛み、吐き気、腹部膨満感、血栓症などがあげられる。ちなみに、エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

3.× 意識障害を伴う脳障害
意識障害を伴う脳障害の合併症には、てんかん発作、てんかん重積状態、水頭症などがあれられる。(正常圧)水頭症とは、脳脊髄液(髄液)の循環障害によって拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を押しつけることにより、数々の脳の障害を引き起こす一連の病態である。①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。水頭症の脳MRIの特徴として、①シルビウス裂の拡大、②側脳室の拡大がみられる。

4.〇 正しい。筋挫傷後の無理な可動域訓練は、骨化性筋炎の原因である。
なぜなら、骨化性筋炎は、外傷、手術、神経損傷などの組織のダメージが原因となるため。基本的に、無謀な徒手矯正はさらなる炎症症状の悪化となるため適さない。

 

 

 

 

 

問題52 外傷とその原因の組合せで正しいのはどれか。

1.手舟状骨骨折:手関節掌屈
2.股関節脱臼:車内のダッシュボードへの膝の衝突
3.上腕骨顆上骨折:上肢の急激な牽引
4.第5中足骨基部裂離骨折:足部外がえし

解答

解説
1.× 手舟状骨骨折は、手関節「掌屈」ではなく背屈である。
手舟状骨骨折とは、サッカーなどの運動時に後ろ向きに転倒して、手関節背屈で手をついた時に受傷することが多い。10〜20代のスポーツ競技者によくみられる骨折である。急性期では、手首の母指側が腫れ、痛みがある。急性期を過ぎると一時軽快するが、放置して骨折部がつかずに偽関節になると、手首の関節の変形が進行し、手首に痛みが生じて、力が入らなくなり、また動きにくくなる。

2.〇 正しい。股関節脱臼:車内のダッシュボードへの膝の衝突
股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

3.× 上肢の急激な牽引は、「上腕骨顆上骨折」ではなく肘内障である。
上腕骨顆上骨折とは、小児の骨折中最多であり、ほとんどが転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じる。転移のあるものは、肘頭が後方に突出してみえる。合併症は、神経麻痺(正中・橈骨神経)、フォルクマン拘縮(阻血性拘縮)、内反肘変形などである。ちなみに、フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。

4.× 第5中足骨基部裂離骨折は、足部「外がえし」ではなく内返しである。
第5中足基部裂離骨折とは、下駄骨折とも呼び、昔下駄を履いたときに足を捻り発生しやすかったため。下駄での発症以外では転倒や段差の踏み外し等が原因で起こる。第5中足骨基底部には、短腓骨筋が付着しているため、足を捻った際に筋肉の収縮力により裂離骨折が起こる。第5中足骨基底部には短腓骨筋が付着しているため、足を捻った際に筋肉の収縮力により裂離骨折が起こる。短腓骨筋の【起始】腓骨外側面、前下腿筋間中隔、【停止】第5中足骨粗面、【作用】足関節底屈、外返し、【神経】浅腓骨神経である。

肘内障とは?

肘内障とは、乳幼児に特有の外傷で、橈骨頭が引っ張られることによって、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になったものである。5歳くらいまでの子どもに発症する。 輪状靭帯の付着がしっかりする6歳以降では起こりにくい。

 

 

 

 

 

問題53 筋萎縮性側索硬化症によくみられるのはどれか。

1.感覚障害
2.眼球運動障害
3.膀胱直腸障害
4.筋線維束性れん縮

解答

解説
1~3.× 感覚障害/眼球運動障害/膀胱直腸障害
これらは、筋萎縮性側索硬化症の4大陰性徴候である。眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡はみられにくい。

4.〇 正しい。筋線維束性れん縮は、筋萎縮性側索硬化症によくみられる。
筋線維束性攣縮(※読み:きんせんいそくせいれんしゅく)は、小さく、かつ局所的な、皮膚下に観察することが可能な不随意な筋肉の収縮及び弛緩運動である。脊髄損傷、筋ジストロフィー、ライム病、クロイツフェルトヤコブ病、神経線維腫症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症にみられる。過労やストレスが誘因することもある。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

問題54 パーキンソン病で振戦が最も起こりやすいのはどれか。

1.字を書くとき
2.じっとしているとき
3.何か物を取ろうとするとき
4.からだの前で手を保持するとき

解答

解説

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

1.3~4.× 字を書くとき/何か物を取ろうとするとき/からだの前で手を保持するとき
これらより、振戦が起きやすいものが他にある。ちなみに、動作時振戦は、薬剤性Parkinson症候群にみられやすい。

2.〇 正しい。じっとしているときは、パーキンソン病で振戦が最も起こりやすい。
パーキンソン病の4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。

 

 

 

 

 

問題55 高血圧性脳出血が最も好発する部位はどれか。

1.被殻
2.視床
3.橋
4.前頭葉

解答

解説


1.〇 正しい。被殻は、高血圧性脳出血が最も好発する部位である。
最も多く全体の60%を占める。

2.× 視床は全体の15%を占める。

3.× 橋は全体の5~10%を占める。

4.× 前頭葉の割合はわずかである。

 

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