第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後176~180】

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問題176 灸による温熱刺激の受容・伝導について正しいのはどれか。

1.カプサイシン受容体(TRPV1受容体)が応答する。
2.Ⅱ群線維によって伝導される。
3.温度感覚は順応が起こりにくい。
4.熱痛情報は脊髄後索を上行する。

解答

解説
1.〇 正しい。カプサイシン受容体(TRPV1受容体)が応答する
唐辛子の成分であるカプサイシンに反応する TRPV1受容体は、42℃以上の熱刺激にも反応することが報告されている。

2.× 「Ⅱ群線維」ではなくⅢ・Ⅳ群線維によって伝導される。
なぜなら、Ⅲ・Ⅳ群線維の求心路は、温冷・痛覚であるため。

3.× 温度感覚は順応が起こりにくいと断言できない
なぜなら、痛覚に対し順応は起こらないため。また、温覚よりも冷覚のほうが順応が遅く、感覚点の数も多いことから、生体にとって温刺激よりも冷刺激のほうが危険であることが分かる。ちなみに、順応とは、ある刺激に慣れることで、順応速度が速いということはその刺激にすぐ慣れて感じにくくなること、順応速度が遅いということはその刺激になかなか慣れずに敏感な状態が続くということである。生体にとって危険な刺激に対する感覚ほど順応は遅い(敏感な状態が続く)と考えてよい。

4.× 熱痛情報は脊髄「後索」ではなく側索を上行する。
外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野である。ちなみに、後索は、深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路である。後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野

 

 

 

 

 

問題177 血管に対し収縮性に作用する物質はどれか。

1.NO
2.CGRP
3.アデノシン
4.ノルアドレナリン

解答

解説
1.× NO
NOとは、一酸化窒素のことで、窒素(N)と酸素(O)が結合した物質である。常温では無色・無臭の気体で、水に溶けにくく、空気よりやや重い。血管の内皮細胞から放出される物質で、血管を拡張してしなやかにして、血圧を安定させる働きを持つ。

2.× CGRP
CGRPとは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドのことで、片頭痛の痛みの直接の原因とされているタンパク質である。脊髄後根神経節で産生され、中枢および末梢の両側性に作用する。末梢血管を著しく拡張させ、血管透過性を亢進させる働きを持つ。

3.× アデノシン
デノシンとは、心臓、骨格筋、脳、肝臓などの種々の臓器の血管拡張を司っており、特に冠血管については、主として直径50~200μmの抵抗血管を拡張し、冠血流量増加をもたらすことから、重要な冠血流量調節因子と考えられている。

4.〇 正しい。ノルアドレナリンは、血管に対し収縮性に作用する物質である。
ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。

 

 

 

 

 

問題178 施灸刺激の早期より肥満細胞から放出されるのはどれか。

1.IgE
2.補体
3.ヒスタミン
4.アドレナリン

解答

解説
1.× IgE
IgEとは、肥満細胞や好塩基球の細胞表面に存在している。ヒスタミン遊離によりアレルギー疾患を引き起こす。生後6か月以降の乳幼児では、しばしばアトピー性アレルギー疾患の進行に伴って血清中のIgE抗体が上昇する。したがって、I型反応(即時型、アナフィラキシー型)のアレルギー反応に関与する。

2.× 補体
補体とは、免疫反応を媒介する血中タンパク質の一群で、動物血液中に含まれる。補体は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を攻撃し、体内から排除する働きがある。

3.〇 正しい。ヒスタミンは、施灸刺激の早期より肥満細胞から放出される。
ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

4.× アドレナリン
アドレナリンとは、腎臓の上にある副腎髄質で合成・分泌されるホルモンである。主な作用は、心拍数や血圧上昇などがある。自律神経の交感神経が興奮することによって分泌が高まる。

 

 

 

 

 

問題179 灸療法の治療的作用において、細網内皮系の機能亢進に関与するのはどれか。

1.調整作用
2.鎮痛作用
3.転調作用
4.防衛作用

解答

解説

細網内皮系とは?

網内系とは、全身に散在し貪食能と共通の細胞形態を示す間葉系細胞の総称であり、リンパ節・脾・消化管粘膜固有層の支持細胞、いわゆる組織球、および肝クッパー細胞・骨髄の洞内皮等が含まれる。

1.× 調整作用
調整作用とは、鎮静作用とも言い換えられ、異常な機能の興奮(疼痛、痙攣など)に対して鎮静させるものをさす。調整作用は、機能低下の疾患に対して興奮を与えて回復させる興奮作用なども含まれる。

2.× 鎮痛作用
鎮痛作用とは、内因性モルヒネ様物質、下行性抑制系などによる鎮痛をあたえるものを指す。

3.× 転調作用
転調作用とは、アレルギー体質や自律神経失調症を改善し、体質を強壮にするものを指す。

4.〇 正しい。防衛作用は、細網内皮系の機能亢進に関与する。
防衛作用とは、白血球や大食細胞などを増加させ、生体の防衛力を高めるものを指す。

 

 

 

 

 

問題180 灸施術による局所炎症反応に最も関与するのはどれか。

1.ルフィニ終末興奮
2.Ⅰb線維興奮
3.インターロイキン6産生
4.カプサイシン産生

解答

解説

局所炎症反応とは?

局所炎症反応として、①血管拡張、②血流増加、③血管透過性の亢進に伴う血漿成分の血管外への漏出、④白血球の血管外へ遊走などが主に生じる。

1.× ルフィニ終末興奮
Ruffini終末(ルフィニ小体)は、触圧覚や痛覚などの感覚受容器である。皮膚の伸張を感じ取る。

2.× Ⅰb線維興奮
Ⅰb線維は、ゴルジ腱器官から脊髄に情報を伝達する神経線維である(腱紡錘)。

3.〇 正しい。インターロイキン6産生は、灸施術による局所炎症反応に最も関与する。
インターロイキン6とは、多彩な生理作用を有するサイトカインと呼ばれる物質の一種で、免疫応答や炎症反応の調節において重要な役割を果たしている。ちなみに、サイトカインとは、さまざまな刺激によって免疫細胞などから産生されるたんぱく質で、主に身体に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除するための役割を担っている。

4.× カプサイシン産生
カプサイシンとは、いわゆる辛味を持つ物質である。唐辛子の成分であるカプサイシンに反応する TRPV1受容体は、42℃以上の熱刺激にも反応することが報告されている。

 

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