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問題31 免疫にかかわる細胞について正しいのはどれか。
1.単球は抗体を産生する。
2.好酸球はリンパ球に抗原を提示する。
3.好塩基球は形質細胞に分化する。
4.好中球は食作用をもつ。
解答4
解説
単球とは、白血球の一種で、最も大きなタイプの白血球である。マクロファージなどへ分化し、貧食・消化・殺菌などの機能を発揮する。単球は、末梢血白血球の2~9%を占める。ちなみに、マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。
1.× 抗体を産生するのは、「単球」ではなくリンパ球である。
リンパ球とは、脊椎動物の免疫系における白血球のサブタイプの一つである。リンパ球には①ナチュラルキラー細胞、②T細胞、③B細胞がある。B細胞は体液性免疫を担当し、B細胞から活性化して形質細胞となり抗体を産生する。
2.× リンパ球に抗原を提示するのは、「好酸球」ではなくマクロファージである。
好酸球とは、主に寄生虫に対する免疫反応が役割である。ほかにも、アトピー性皮膚炎や薬剤アレルギー、気管支喘息などでも増加する。末梢血白血球の1~6%を占め、呼吸器や腸管などに存在する。
3.× 形質細胞に分化するのは、「好塩基球」ではなくB細胞である。
好塩基球とは、Ⅰ型アレルギー(即時型アレルギー)を引き起こす。末梢血白血球の0~2%を占める。ほかにも、好酸球や好中球の移動を助ける役割も担う。
4.〇 正しい。好中球は食作用をもつ。
好中球は、健康な成人の白血球の中に占める割合が高い。好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。細菌感染による急性炎症で最初に反応する。
アレルギー反応の分類法としては、免疫反応による組織傷害の機序から分類したGellとCoombsの分類が使われることが多い。本分類はその反応に関与する抗体や細胞の違いにより分類されるが、現象的には皮膚反応出現にかかる時間と反応の性状により分けられる。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型は血清抗体が関与する体液性免疫(humoral immunity)、Ⅳ型は感作リンバ球による細胞性免疫(cellularimmunity)と大別される。
(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)
問題32 日内リズムについて正しいのはどれか。
1.副腎皮質ホルモンの血中濃度は早朝が最も高い。
2.メラトニンの血中濃度は正午が最も高い。
3.血糖値は夕食前が最も高い。
4.直腸温は睡眠中が最も高い。
解答1
解説
副腎には、①副腎皮質と②副腎髄質からホルモンが分泌される。①副腎皮質ホルモンとは、副腎皮質より産生されるホルモンの総称で、①アルドステロン、②コルチゾール、③アンドロゲンがある。炎症の制御、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質のレベル、免疫反応など広範囲の生理学系に関わっている。②副腎髄質からはアドレナリンとノルアドレナリンが分泌される。
1.〇 正しい。副腎皮質ホルモンの血中濃度は早朝が最も高い。
体内時計は、朝方になると、覚醒作用を持つ副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の分泌を促す。副腎皮質ホルモンは、日中は体温を高く保ち、夜は体から熱を放散し、特に脳を冷やし、身体を休ませる働きをする。同時に、体内時計を調整するホルモンであるメラトニンが分泌を始め、入眠を促す。
2.× メラトニンの血中濃度は、「正午(昼の12時)」ではなく正子(しょうし:夜の12時)が最も高い。
メラトニンとは、夜間に脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計による夜間の身体の休息を促す働きを持つ。メラトニン分泌量が低下するため睡眠障害が起こりやすくなる。
3.× 血糖値は、「夕食前」ではなく食後1時間程度が最も高い。
血糖値とは、血液内のグルコースの濃度である。健常なヒトの場合、空腹時血糖値はおおよそ80~100mg/dL程度であり、食後は若干高い値を示す。
4.× 直腸温は、「睡眠中」ではなく睡眠前が最も高い。
なぜなら、体温は、ストレスと関連性が高いため。ストレスが最も高い睡眠前が最も高い傾向がある。
問題33 パーキンソン病の病因に関与するのはどれか。
1.コルチゾール
2.セロトニン
3.インスリン
4.ドパミン
解答4
解説
パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
1.× コルチゾール
コルチゾールとは、副腎皮質から分泌されるホルモンで、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがある。過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。
2.× セロトニン
セロトニンとは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。
3.× インスリン
インスリンとは、膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモンである。血中を流れるブドウ糖が、肝臓、脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調節する。糖尿病と関連性が高い。
4.〇 正しい。ドパミンは、パーキンソン病の病因に関与する。
ドパミンとは、運動調節や意欲・学習などに関わる脳内の神経伝達物質である。脳内のドパミン量が不足するとパーキンソン病になり、過剰になると統合失調症になると考えられている。 統合失調症の治療薬は、ドパミンD2受容体に結合して不活性化させる。
膵臓のランゲルハンス島からは、①インスリン、②グルカゴン、③ソマトスタチンが分泌される。
①インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。
②グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。
③ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるδ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。
問題34 梗塞について正しいのはどれか。
1.組織間隙に過剰な水分が貯留した状態
2.動脈から過剰な血液が流れ込んだ状態
3.血管内で血液が凝固した状態
4.終末動脈が閉塞し、その支配組織に壊死が生じた状態
解答4
解説
1.× 組織間隙に過剰な水分が貯留した状態
これは浮腫の説明である。浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起こることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
2.× 動脈から過剰な血液が流れ込んだ状態
これは動脈瘤の説明である。大動脈瘤とは、動脈硬化や高血圧などが原因で、大動脈が拡大し破裂の恐れを呈する病気である。大動脈瘤破裂は極めて死亡率の高い疾患であり緊急手術を行っても助かる見込みが少ない非常に重篤な病気である。
3.× 血管内で血液が凝固した状態
これは血栓の説明である。血栓とは、血管内において形成される凝血塊。血栓によって生じる病態を総称して血栓症という。 正常な状態では血液の凝固の促進が体内で調節されており、出血時に血栓を形成して止血される。止血が完了し障害された部位が修復されると血栓は消える。これを線溶作用という。
4.〇 正しい。終末動脈が閉塞し、その支配組織に壊死が生じた状態が、梗塞である。
急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。合併症には、不整脈や心不全、脳梗塞がある。そのほかに重篤なものとして心破裂や心室中隔穿孔などがある。
問題35 血栓症を生じやすい疾患はどれか。
1.肝硬変
2.糖尿病
3.再生不良性貧血
4.ビタミンC欠乏症
解答2
解説
1.× 肝硬変
肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。
2.〇 正しい。糖尿病は、血栓症を生じやすい疾患である。
なぜなら、糖尿病のように、高血糖の状態が慢性的に続くと、血管の壁が傷つきコレステロールが蓄積するため。この蓄積したコレステロールは、血管内にプラークという塊を形成し、動脈の壁が硬くなる動脈硬化が起こす。プラークが長い年月をかけて蓄積することによって動脈の血液の流れる部分が狭くなり、血液が流れにくくなる。
3.× 再生不良性貧血
再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中 の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。
4.× ビタミンC欠乏症
ビタミンC欠乏は、壊血病を生じる。壊血病は、結合組織の異常から毛細血管が脆弱化して出血しやすくなる。
血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。
【概念】
伴性劣性遺伝(男児に多い):生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。
血友病A:第Ⅷ凝固因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ凝固因子の活性低下
【症状】関節内出血を繰り返し、疼痛、安静により関節拘縮を起こす。(筋肉内出血・血尿も引き起こす)肘・膝・足関節に多い。鼻出血、消化管出血、皮下出血等も起こす。
【治療】凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーション
(※参考:「血友病」Medical Note様HP)