第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後1~5】

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※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にてご教授いただければ幸いです。(※問題の引用:第30回柔道整復師国家試験問題、公益財団法人柔道整復研修試験財団HPより)

 

問題1 WHO憲章に述べられている健康で正しいのはどれか。

1.身体だけでなく精神的にも完全な状態である。
2.健康の向上において公衆の積極的な関与は重要ではない。
3.最高の健康水準を享受することは万人の基本的権利である。
4.享受できる健康水準に対する権利は国の事情によって異なる。

答え.

解説

健康の定義とは?

WHO憲章では以下のように定義している。「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」また、同憲章にはこんなことも謳われている。「到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一つである。」「全ての人民の健康は、平和と安全を達成する基礎であり、個人と国家の完全な協力に依存する。」「ある国が健康の増進と保護を達成することは、全ての国に対して価値を有する。」つまり、健康が個人にとって、また国家にとっても極めて大切なものであり、その達成に向けて個人と国家が協力していくことが必要ということである。これが既に半世紀以上前に作成されており、今でもなお憲章としての意味を持ち続けているのである。

(引用:「健康長寿社会の実現に向けて~健康・予防元年~」厚生労働省HPより)

1.× 身体だけでなく精神的「と社会的」にも完全な状態である。
健康とは、肉体的精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではないとされている。

2.× 健康の向上において公衆の積極的な関与は「重要である」。
なぜなら、健康とは、肉体的精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、公衆の積極的な関与は社会的な要素であるため。社会的には、人との交流や社会とのつながりが当てはまる。

3.〇 正しい。最高の健康水準を享受することは万人の基本的権利である。これは、WHO憲章の第一章第一条(目的)において「世界保健機関の目的は、すべての人民が可能な最高の健康水準に到達することにある」と記載されている(※引用:「世界保健機関憲章」厚生労働省HPより)

4.× 享受できる健康水準に対する権利は国の事情によって「異なるものではない」。
なぜなら、到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一つであるため。

世界保健機関とは?

世界保健機関とは、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関である。

設置年:昭和23(1948)年
本部:ジュネーブ(スイス)
協力形態:多国間交流
事業内容:発展途上国への国際保健協力、感染症およびその他の疾病(エイズ・結核・マラリア等)の撲滅事業、国際疾病分類(ICD)の作成
備考:①WHOの構成組織である地域的機関は、6つ(アフリカ、アメリカ、東南アジア、ヨーロッパ、東地中海、西太平洋)あり、日本は西太平洋に所属している。②194か国加盟 (2018年4月時点)、③たばこ規制枠組み条約:たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を保護することを目的とし、たばこに関する広告、包装上の表示等の規制及びたばこの規制に関する国際協力について規定。

(※参考:「日本とWHO」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題2 プライマリヘルスケアにあてはまらないのはどれか。

1.疾病の予防
2.先進医療の提供
3.地域住民の健康管理
4.専門病院との連携機能の保持

答え.

解説
1.3~4.〇 疾病の予防/地域住民の健康管理/専門病院との連携機能の保持は、プライマリヘルスケアである。
プライマリヘルスケアは、アルマ・アタ宣言(1978年)で提唱されたもので、地域住民が一次的に利用する保健医療サービスを指す。【8つの活動項目】①健康教育(ヘルスプロモーション)、②食料の供給と栄養の改善、③安全な飲料水の供給と基本的な環境衛生、④母子保健サービス(家族計画を含む)、⑤主要な感染症の対策(予防接種)、⑥風土病の対策、⑦簡単な病気やけがの治療(プライマリケア)、⑧必須医薬品の供給などである。

2.× 先進医療の提供は、プライマリヘルスケアにあてはまらない。
プライマリヘルスケアは、基本的な医療サービスと健康の管理を提供することに重点を置いている。先進的な医療技術や専門的な治療は、通常、二次医療(専門医療)や三次医療(高度な専門医療)の領域に含まれる。

プライマリヘルスケアとは?

プライマリヘルスケアは、アルマ・アタ宣言(1978年)で提唱されたものである。地域住民が一次的に利用する保健医療サービスを指す。

提唱元:アルマ・アタ宣言(WHOとUNICEF)

概念:「すべての人々に健康を」を目標に、病気の治療よりも予防対策や健康管理に重点を置いた保健活動

【4つの原則】
①住民のニーズに基づくこと
②地域資源の有効活用
③住民参加
④農業・教育・通信・建設・水利等、多分野間の協調と統合

【8つの活動項目】
①健康教育(ヘルスプロモーション)
②食料の供給と栄養の改善
③安全な飲料水の供給と基本的な環境衛生
④母子保健サービス(家族計画を含む)
⑤主要な感染症の対策(予防接種)
⑥風土病の対策
⑦簡単な病気やけがの治療(プライマリケア)
⑧必須医薬品の供給

(※参考:「プライマリ・ヘルス・ケア」特定非営利活動法人シェア様HPより)

 

 

 

 

 

問題3 疫学研究方法でエビデンスのレベルが最も高いのはどれか。

1.介入研究
2.症例報告
3.横断研究
4.症例対照研究

答え.

解説

(※図引用:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014に記載されている「エビデンスのレベル分類」)

1.〇 正しい。介入研究は、疫学研究方法でエビデンスのレベルが最も高い。
介入研究(無作為化比較試験、ランダム割付比較試験)エビデンスレベルⅡである。介入研究とは、一部の対象者に何らかの働きかけ(介入)を行い、介入群と非介入群に分けて研究する調査である。無作為化比較試験とは、予防・治療の効果を科学的に評価するための介入研究のことをいう。対象者を無作為に介入群(治療などの介入実施群)と対照群(従来通りの治療群、もしくは介入しない群)とに割付け、その後の健康現象(罹患率・死亡率)を両群間で比較するもの。無作為割付によって、既知・未知の交絡を制御することが期待されることから、他のデザインと比べて最もエビデンスレベルが高い手法である。

2.× 症例報告
症例報告は、エビデンスレベルⅤである。症例報告とは、個別の症例の治療を経験した後に、教科書的な経過をたどらなかったもの、あるいは教科書的な治療を超える工夫を行ったものについて、今後の参考に資するために詳細を報告する。個別の症例を対象であるため、エビデンスレベルは低い。

3.× 横断研究
横断研究は、エビデンスレベルⅣbである。横断研究とは、一時点での疾病の頻度と分布をありのままに記述し、疾病の発生要因の仮説を立てる方法である。

4.× 症例対照研究
症例対照研究は、エビデンスレベルⅣbである。症例対照研究とは、症例群と対照群に分け、両群の過去の曝露状況を比較する方法である。曝露と疾患発症の関連を明らかにする。疾患のある人(症例)と疾患のない人(対照)を比較し、過去の暴露やリスク要因の違いを調査できるため、まれな疾患に対して効率的で、時間や費用が比較的少なく済む。

コホート研究と症例対照研究の比較

コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。

症例対照研究とは、時間軸:後ろ向き研究で、観察期間はない。信頼性は低いが費用・労力が小さい。

 

 

 

 

 

問題4 総患者数が最も多いのはどれか。

1.悪性新生物
2.高血圧性疾患
3.糖尿病
4.脳血管疾患

答え.

解説

(図引用:「15 – 5 主な傷病の総患者数」厚生労働省HPより)

1.× 悪性新生物
日本において、悪性新生物の総患者数は、1782000人である。

2.〇 正しい。高血圧性疾患は、総患者数が最も多い。
日本において、高血圧性疾患の総患者数は、9937000人である。

3.× 糖尿病
日本において、糖尿病の総患者数は、3289000人である。

4.× 脳血管疾患
日本において、脳血管疾患の総患者数は、1115000人である。

(各選択肢のデータ引用:「15 – 5 主な傷病の総患者数」厚生労働省HPより)

少し疑問が残る問題・・・

問題への疑問。総患者数が最も多いとは、①どこの国・地域のことであるか?(全世界においての患者数なのか、日本全体なのか)、解いていて違和感だった。ここでは日本全体の患者数で求めた。

 

 

 

 

 

問題5 介護認定審査会で正しいのはどれか。

1.介護支援専門員の意見書を提出する。
2.都道府県に設置される。
3.二次判定を行う。
4.要支援の判定は行わない。

答え.

解説

MEMO

介護認定審査会とは、市町村の附属機関として設置され、要介護者等の保健、医療、福祉に関する学識経験者によって構成される合議体である。介護保険の給付を受けるために必要な要介護認定の手続きのうち、二次判定を行うものである。保健・医療・福祉の学識経験者で構成される。

1.× 「介護支援専門員」ではなく主治医の意見書を提出する。
介護支援専門員とは、介護保険法等を根拠に、ケアマネジメントを実施することのできる公用資格、また有資格者のことをいう。免許という位置づけではなく、要支援・要介護認定者およびその家族からの相談を受け、介護サービスの給付計画を作成し、自治体や他の介護サービス事業者との連絡、調整等を行う。ちなみに、要介護認定の手順として、①被保険者が市区町村に要介護認定申請書を提出する。②市区町村は、認定調査員を本人(被保険者)宅に派遣して訪問調査を行い、主治医に意見書の作成を依頼する。③認定調査の結果がコンピュータに入力されて1次判定が行われる。④介護認定審査会において、1次判定の結果及び認定調査票の特記事項、主治医意見書を用いて2次判定が行われ、介護認定が判定される。⑤介護認定審査会から市区町村に判定結果が通知される。⑥市区町村から判定結果が本人(被保険者)に郵送で通知される。

2.× 「都道府県」ではなく市町村に設置される。
まず、要介護認定の申請が市町村に行われると、調査員が訪問調査を行い、併せてかかりつけ医等から医学上の意見を収集する(主治医意見書)。 それらの情報に基づいて各市町村が設ける介護認定審査会が審査を行う。審査会委員は、保健、医療、福祉に関する学識経験者から市町村長が任命する。

3.〇 正しい。二次判定を行う
介護認定審査会とは、市町村の附属機関として設置され、要介護者等の保健、医療、福祉に関する学識経験者によって構成される合議体である。介護保険の給付を受けるために必要な要介護認定の手続きのうち、二次判定を行うものである。保健・医療・福祉の学識経験者で構成される。

4.× 要支援の判定も「行う」。
介護認定審査会は、要支援(要支援1、要支援2)と要介護(要介護1~5)の判定を行う。

 

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