第28回（R2年）柔道整復師国家試験 解説【午後111～115】

答え．1・4

解説

1．〇　正しい。受傷直後のエックス線像で骨折を確認できないことがある。
なぜなら、舟状骨は船のような形をして、斜めに位置するため。通常のレントゲン撮影では、診断されず捻挫として扱われ、痛みが持続して偽関節なる場合に注意しなければならない。対策として、さまざまな角度から、特に橈骨側から斜めにレントゲンを撮影する。

2．×　手関節部の変形が著明とはいえない。
なぜなら、舟状骨骨折は、手関節部の腫脹著明となるため。腫脹により軽度の変形は観察されにくい。

3．×　固定期間は比較的短期間であると断言できない。
なぜなら、舟状骨骨折は、偽関節へと発展しやすいため。固定期間は最短で6週間であるが、骨癒合が不良な場合には数か月の固定を必要とする場合がある。

4．〇　正しい。骨癒合が遷延しやすい。
なぜなら、舟状骨は、血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位であるため。また、舟状骨骨折は、発見されなかった場合、放置して固定期間を経ず、手の使用やスポーツを続けてしまう場合が多い。骨癒合遷延とは、骨折部位の骨の癒合が順調に進んでいない状態である。受傷後4ヶ月以上たっても癒合しないものを指すことが多い。

答え．3

解説

1．〇　慢性浮腫は、踵骨骨折の続発症である。
なぜなら、骨折後の慢性浮腫は、重力の関係から生じるため。また、筋肉が傷つくと炎症反応を引き起こす物質がつくられ、血管を広げて血流を促す働きが活発となり、血管から水分が漏れ出しやすくなり、結果的に浮腫が生じる。

2．〇　ズデック（Sudeck）骨萎縮は、踵骨骨折の続発症である。
Sudeck骨萎縮とは、骨折などの外傷、または、その手術の後に、急速な自発痛、運動痛、浮腫とともに著明な骨萎縮をきたす場合の骨変化のことである。骨折に合併した自律神経系の血管運動神経失調によって、末梢血管の血流不全から起こるものといわれている。Sudeck骨萎縮（ズデック骨萎縮）は、CRPS typeⅠに分類される。

3．×　無腐性骨壊死は、続発症として起こりにくい。
なぜなら、踵骨は血流が阻害されやすいため。無腐性骨壊死とは、特定の部位の骨組織が、感染症以外の何らかの理由により壊死に陥り、そのため力学的に脆弱となり、圧潰陥没変形を生じ、更に二次的に軟骨病変が引き起こされ、関節症に至る疾患群をさす。起きやすい部位は股関節で「特発性大腿骨頭無腐性壊死症」と呼ばれる。

4．〇　腓骨筋腱鞘炎は、踵骨骨折の続発症である。
なぜなら、踵骨骨折後の変形性関節症（特に距骨との関節部）の骨棘や慢性浮腫による腱の滑走の低下など様々な要因があげられるため。腓骨筋腱腱鞘炎とは、外くるぶし後方を通り足の骨に付く筋肉の腱（腓骨筋腱）に炎症が起きた状態である。

答え．3

解説

1．×　内果裂離骨折
内果裂離骨折の原因は、靭帯や腱の無理な牽引である。組織が損傷して治癒する過程で「癒着」が発生する。周囲の軟部組織を癒着が巻き込むことで関節の可動域が制限される関節拘縮が起きやすくなる。裂離骨折とは、剥離骨折ともいい、靭帯や筋肉の牽引によってその付着部が引きはがされて損傷してしまった状態を指す。

2．×　三角靭帯断裂
三角靭帯断裂の原因は、外反捻挫が多い。靭帯の働きとして、関節の固定・安定化があげられる。よって、三角靭帯断裂によって、身体を支えることが出来なり、歩くことが困難となる。

3．〇　距骨体部骨折が考えられる。
距骨体部骨折の原因は、高い所から落ちて足で踏ん張った際などに大きな力が加わり骨折する。症状として、炎症4徴候のほかに、ナウマン徴候（距骨骨折で生じる症状であり骨片が足関節後方に転位した際に、長母指屈筋腱を圧迫して腱には牽引力が働き第1足指が直角に屈曲する所見）がみられる。治療として、高度の圧迫骨折や転移の大きいものは観血療法を実施する。予後として、変形性関節症や阻血性壊死、機能障害を残すことが多い。

4．×　ショパール関節脱臼
ショパール関節とは、横足根関節ともいい、踵骨—距骨—舟状骨—立方骨の間の関節のことである。ショパール関節脱臼の原因として、自転車やバイク事故など高エネルギー長い力、前足部に内・外転力が作用して生じる。多くは不全脱臼となる。ほとんどの場合、他の足根骨や中足骨などの骨折を合併する。

答え．4

解説

1．×　前距腓靱帯損傷は考えにくい。
なぜなら、前方引き出しテスト：陰性であるため。足関節の前方引き出しテストとは、前距腓靭帯の安定性を見る。足関節は軽度底屈位で、踵を包むようにして前方へ引き出す。陽性の場合、患側の距骨は健側と比較して前方へ引き出される。また距骨が亜脱臼するため、足を戻す際、患者の痛みの訴えとともに「カクッ」という動きを触知できる。ちなみに、外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

2．×　三角靭帯損傷は考えにくい。
なぜなら、三角靭帯は、足関節内側に位置しているため。本症例の足関節は外側部の痛みが強い。足関節内側靭帯（三角靭帯）は、外反捻挫により損傷されることが多い。

3．×　リスフラン関節損傷は考えにくい。
なぜなら、リスフラン関節損傷の原因として、前足部に捻転力などの外食が加わった時に生じるため。また、第5中足骨側に多く、中足骨基底部骨折を合併することが多い。ちなみに、リスフラン関節とは、足根中足関節ともいい、3つの楔状骨（内側・中間・外側楔状骨）—立方骨—中足骨で構成する関節のことである。

4．〇　踵骨前方突起骨折が考えられる。
踵骨前方突起骨折とは、前方突起縁の二分靭帯がついている部分の裂離骨折である。踵骨前方突起は内返しで剥離骨折となり、外返しで距骨と衝突して圧迫骨折となる。初期段階で骨折を発見できれば、3週間程度ギブス固定をすると、後遺障害を残さずに完治することが多い。疼痛が改善しない場合、偽関節が起こっていることが考えられ、手術が検討される。

答え．4

解説

1．×　骨片がみられるため「Ⅱ型」ではなくⅢ型である。
【末節骨骨折・マレットフィンガーの分類】
Ⅰ型（腱断裂）：終止腱の断裂
Ⅱ型（裂離骨折）：終止腱の停止部での裂離骨折
Ⅲ型（関節内骨折）：末節骨の背側関節面を含む骨折

2．×　DIP関節を「過伸展位」ではなく伸展位で固定する。
なぜなら、過伸展位にすると、骨片が背側に押しだされ、転位の増悪をまねくため。安定性が悪い場合は、観血療法の適応となる。

3．×　固定期間は、「8～10週」ではなく6週間以上とする。
Ⅰ型：6～8週間、Ⅱ・Ⅲ型：5～6週間が目安ではあるが、骨性の場合手術も検討される。

4．〇　正しい。掌側脱臼に注意する。
Ⅲ型は、脱臼骨折の型となり、骨折面が安定な場合、PIP関節屈曲位、DIP関節伸展位で固定とする。