第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午前121~125】

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問題121 うっ血で正しいのはどれか。

1.肺うっ血は右心不全によっておこる。
2.下肢のうっ血では下肢静脈瘤が生じやすい。
3.門脈圧亢進症では腹水より胸水をきたしやすい。
4.うっ血肝では小葉中心部が黄色、辺縁部が暗赤色を呈する。

解答

解説

心不全とは?

心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。

心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

1.× 肺うっ血は、「右心不全」ではなく左心不全によっておこる。肺うっ血とは、心不全などの循環不全(心臓のポンプ機能の低下)により、肺に血流がうっ滞する状態を示す。このため、呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じる。

2.〇 正しい。下肢のうっ血では下肢静脈瘤が生じやすい。下肢静脈瘤とは、体のすみずみに行きわたった血液が、心臓に戻る血管を静脈といい、足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状に浮き出て見えるようになった状態のことをさす。

3.× 逆である。門脈圧亢進症では「胸水」より「腹水」をきたしやすい。なぜなら、門脈は、だいたいの消化管(腹部)から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管であるため。胃、腸、膵臓、脾臓、胆嚢の毛細管から静脈血を集める。ちなみに、門脈圧亢進症とは、門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは、肝硬変、住血吸虫症、および肝血管異常である。続発症として、食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い、しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。

4.× 逆である。うっ血肝では、小葉中心部が「暗赤色」、辺縁部が「黄色」を呈する。なぜなら、肝小葉中心部(中心静脈周囲)は、血液のうっ滞が著明であるため。うっ血肝とは、心臓の働きが低下した心不全によって、心臓に戻るはずの血液が肝臓に滞留して起こる肝障害である。原因として、急性心筋梗塞や肺炎などで心臓の働きが急激に低下した急性心不全である。

(※図引用:「看護師イラスト集」より)

 

 

 

 

 

問題122 高血圧の合併症で誤っているのはどれか。

1.脳出血
2.心筋過形成
3.腎糸球体硬化
4.動脈硬化進行

解答

解説
1.〇 脳出血は、高血圧の合併症である。なぜなら、高血圧は脳内の血管に負担をかけ、その結果として血管が破裂しやすくなるため。ちなみに、脳出血とは、脳を貫いて走る非常に細い血管が破綻して出血し、出血に巻き込まれた神経細胞が障害される病気である。原因として、高血圧(60%)・脳動静脈奇形・脳動脈癌などである。

2.× 心筋過形成は、高血圧の合併症ではない。心筋過形成(肥大型心筋症)の原因として、遺伝的要因が主な病因である。心筋細胞の中に、心筋の収縮に関わるサルコメア蛋白という一群が存在し、この蛋白をコードしている遺伝子の変異が主な原因とされている。心筋過形成とは、肥大心筋の硬化に伴う拡張機能障害(拡張期充満圧の上昇を招く)である。拡張期に心室内の血液充填が十分に行われず、心拍出量が低下、血圧の低下などが起こる。症状を有する場合には、不整脈に伴う動悸やめまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感などが起こる。

3.〇 腎糸球体硬化は、高血圧の合併症である。なぜなら、高血圧は腎臓の糸球体に負担をかけ、長期的には糸球体の硬化(腎機能の低下)する。この状態を腎硬化症といい、慢性腎臓病の一因となる。糸球体が硬化すると、高濃度のタンパク尿や血尿、高血圧、浮腫などの症状を引き起こす可能性がある。

4.〇 動脈硬化進行は、高血圧の合併症である。なぜなら、高血圧は動脈壁に継続的に高い圧力をかけるため。動脈壁の内膜に傷がつきやすくなり、そこに脂質が蓄積してプラークが形成されることで動脈硬化が進行する。

慢性腎不全とは?

 慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

 

 

 

 

 

問題123 代謝性の変化はどれか。

1.トレーニングによる骨格筋の発達
2.加齢男性の前立腺肥大
3.妊娠時乳腺組織の発達
4.左腎摘出後の右腎肥大

解答

解説

代謝とは?

代謝とは、生体内で生じる全ての化学変化とエネルギー変換のことである。 さまざまな栄養素が合成・分解されていく過程を指す。 代謝の過程を物質の面からみた場合を物質代謝と呼び、エネルギー変化の面からみた場合をエネルギー代謝と呼ぶ。

1.× トレーニングによる骨格筋の発達は、生理的なプロセスである。筋肥大は、トレーニングによって筋線維の一部が破断され、適切な栄養と休養を与えることで傷ついた筋肉が修復される過程で起こる。修復の際に筋線維は以前よりも少し太くなって修復されるため、筋肉が大きくなる。

2.× 加齢男性の前立腺肥大は、加齢的に伴う生理的プロセスである。前立腺肥大症は、前立腺移行領域が肥大する病気である。前立腺部の尿道が圧迫され排尿困難が生じる。発症には、男性ホルモンの作用亢進が関与している。病態改善には、男性ホルモン作用を抑制することが重要である。そのため、治療にはα1阻害薬や、抗アンドロゲン薬も用いられる。

3.× 妊娠時乳腺組織の発達は、生理的(内分泌系)なプロセスである。乳腺が発達するのは、妊娠で女性ホルモンのエストロゲンが増加するため。妊娠中期から妊娠末期にかけては乳汁の産生が開始する。

4.〇 正しい。左腎摘出後の右腎肥大は、代謝性の変化である。左腎が摘出されると、右腎が残存腎機能を補うために代謝的に活性化され、その結果として肥大する。代謝性の変化のひとつである代償性肥大:代償機転である。

 

 

 

 

 

問題124 炎症の経過で正しいのはどれか。

1.肉芽形成で炎症治癒は終結する。
2.線維化は細胞傷害直後にみられる反応である。
3.細胞傷害によって毛細血管の透過性亢進が起こる。
4.急性炎症ではリンパ球が血管外に遊出し、遅れて好中球が遊出する。

解答

解説

創傷の治癒過程とは?

①血液凝固期(術後~数時間後):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期である。
②炎症期(術直後~3日目ころ):炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
③増殖期(3日目~2週間後):線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期である。
④成熟期(2週間~数か月後)(再構築期:リモデリング期):線維芽細胞が減り、線維細胞へと成熟し変化するじきである。コラーゲンの再構築が起き、創部の抗張力が高くなることで創傷が治癒していく。

1.× 肉芽形成で炎症治癒は終結「ではない」。なぜなら、肉芽形成は、増殖期に起こり、その後、成熟期が控えるため。ちなみに、肉芽とは、毛細血管に富んだ新生結合組織(幼若な結合組織)である。

2.× 線維化は、「細胞傷害直後」ではなく慢性炎症にみられる反応である。線維化とは、実際には線維芽細胞の増殖と過剰な細胞外基質の貯蓄のことである。線維化は、多くの慢性炎症性疾患に共通する所見であり、臓器の機能障害の重要な原因である。

3.〇 正しい。細胞傷害によって毛細血管の透過性亢進が起こる。炎症による血管透過性の亢進の結果、 出現する血液成分の血管外移動を滲出といい、 その体液を滲出液という。

4.× 逆である。急性炎症では、「好中球」が血管外に遊出し、遅れて「リンパ球」が遊出する。好中球は最初の24時間に炎症部位に集まり貪食、その後、単球やマクロファージ、リンパ球が続いて遊出する。ちなみに、好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。細菌感染による急性炎症で最初に反応する。

慢性炎症の特徴

慢性炎症の背景は、自己免疫、急性炎症からの移行、微生物の細胞内持続感染がある。
【特徴】
①大食細胞やリンパ球および形質細胞などの浸潤
②炎症細胞の浸潤による組織破壊
③新生血管の増生を含む修復と線維化・瘢痕形成
線維化とは、実際には線維芽細胞の増殖と過剰な細胞外基質の貯蓄のことである。
線維化は、多くの慢性炎症性疾患に共通する所見であり、臓器の機能障害の重要な原因である。

 

 

 

 

 

問題125 Ⅴ型(刺激型反応)アレルギーに分類されるのはどれか。

1.蕁麻疹
2.IgA腎症
3.異型輸血
4.バセドウ(Basedow)病

解答

解説
1.× 蕁麻疹は、Ⅰ型アレルギーである。蕁麻疹とは、皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡かたなく消えてしまう病気で一般に食べ物や薬に対するアレルギー反応として起こると思われることが多い。

2.× IgA腎症は、Ⅲ型アレルギーである。IgA腎症とは、検尿で血尿や蛋白尿を認め、腎臓の糸球体に免疫グロブリンのIgAという蛋白が沈着する病気である。多くは慢性の経過をたどる。

3.× 異型輸血は、Ⅱ型アレルギーである。異型輸血とは、ABO血液型が異なる血液を輸血することである。ABO血液型が異なる血液を輸血すると、患者に深刻な健康被害を与える可能性があり、最悪の場合ショック症状(血圧の低下、尿がでなくなるなど)を引き起こして死に至ることもある。

4.〇 正しい。バセドウ(Basedow)病は、Ⅴ型(刺激型反応)アレルギーに分類される。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。Ⅴ型アレルギー反応とは、ホルモンを分泌する細胞に結合する反応で、甲状腺機能亢進症・低下症を引き起こす。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

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