第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午前31~35】

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問題31 膝関節内側側副靱帯損傷でギプスシャーレ固定後に足背部にしびれを訴えている。
 考えられる圧迫部位はどれか。

1.鵞足
2.腓骨頭
3.脛骨粗面
4.大腿骨外側上顆

解答

解説
1.× 鵞足は考えにくい。なぜなら、鵞足は膝の内側にあるため。鵞足とは、薄筋・縫工筋・半腱様筋がついている部位のことを指す。

2.〇 正しい。腓骨頭が考えられる圧迫部位である。なぜなら、本症例は、足背部にしびれを訴えていることから、腓骨神経麻痺が疑われる。腓骨神経は膝の外側を走行しており、ギプスシャーレが適切に装着されていない場合、この部位で圧迫が生じやすい。ちなみに、腓骨神経麻痺とは、腓骨頭部(膝外側)の外部からの圧迫などによって、腓骨神経の機能不全をきたしている状態である。腓骨神経は、感覚(下腿外側、足背)や運動(足関節および足趾の背屈)を支配しているため、下腿の外側から足背ならびに足趾背側にかけて感覚が障害され、しびれたり、触った感じが鈍くなる。また、足首と足の指が背屈(上に反る)できなくなり、下垂足となる。

3.× 脛骨粗面は考えにくい。脛骨粗面は、膝の前面に位置し、膝蓋腱が付着する部位である。

4.× 大腿骨外側上顆は考えにくい。大腿骨外側上顆は、膝の外側に位置する骨の突起部で、腓腹筋が付着する。

 

 

 

 

 

問題32 下腿三頭筋肉離れで正しいのはどれか。

1.腓腹筋内側に好発する。
2.つま先立ちは不能である。
3.トンプソンテスト陽性である。
4.スポーツ選手では観血療法が選択されることが多い。

解答

解説

肉離れとは?

肉離れとは、筋肉が過度に引き伸ばされたり、筋肉が縮んだ状態から引き伸ばされた際に筋線維が切れることである。肉離れの予防として、①柔軟性の向上、②血行改善、③アイシング、④違和感があった際の中断が必要となる。

【好発部位】
大腿四頭筋:太ももの前側(大腿直筋)で起こりやすい。なぜなら、股関節と膝関節の二つの関節の動きに作用する二関節筋であるため。
ハムストリングス:大腿二頭筋(筋腱移行部)で起こりやすい。
下腿三頭筋:筋線維の多くは筋腱移行部での部分損傷で、特に腓腹筋内側頭で起こりやすい。10代からみられ、各年齢層にまんべんなく発生する。受傷機序として、日常生活中やスポーツ現場では階段を下りた際や、ランニングやダッシュの途中などにふくらはぎに鋭い痛みが走り、その後の歩行が困難になるケースがよく見られる。足関節底屈の際、親指のほうが大きく力を発揮するのに適しており、親指側に力が入りやすいため、外側より内側のほうが受傷しやすい。

1.〇 正しい。腓腹筋内側に好発する。筋線維の多くは筋腱移行部での部分損傷で、特に腓腹筋内側頭で起こりやすい。

2.× つま先立ちは不能であるのは、下腿三頭筋腱の「断裂」である。肉離れの場合、足関節底屈に伴い鋭い痛みが発生し、筋力低下をきたす。

3.× トンプソンテスト陽性であるのは、下腿三頭筋腱の「断裂」である。Thompsonテスト(トンプソンテスト)は、アキレス腱断裂を診るテストである。患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。

4.× スポーツ選手では観血療法が選択されることが多いのは、下腿三頭筋腱の「断裂」である。肉離れは、保存療法が選択される。ちなみに、観血療法は、外科的療法ともいい、人体を傷つけ、出血させて治療する方法の総称(手術)である。それに対して、保存的療法とは出血させずに治療する方法である。

 

 

 

 

 

問題33 足関節前距腓靭帯損傷時の前方引き出し検査で正しいのはどれか。

1.足背を把持する。
2.膝関節を伸展位とする。
3.足関節背屈位で行う。
4.距骨に内旋を加える。

解答

解説

前距腓靱帯とは?

前距腓靱帯とは、足関節の外側に付着し、内がえし方向の捻挫を防いでいる。したがって、外返しに働く筋群を強化することで、足関節内反傾向を回避することができる。

1.× 「足背」ではなく足底(踵)を把持する。なぜなら、足底(踵)を把持した場合、足の細かな関節をまたがずにより力が加わりやすいため。

2.× 膝関節を「伸展位」ではなく屈曲位とする。なぜなら、下腿三頭筋(アキレス腱)を弛緩させ、より正確な検査が行えるため。

3.× 足関節「背屈位」ではなく軽度屈曲位で行う。

4.〇 正しい。距骨に内旋を加える。足関節の前方引き出しテストとは、前距腓靭帯の安定性を見る。足関節は軽度底屈位で、踵を包むようにして前方へ引き出す。陽性の場合、患側の距骨は健側と比較して前方へ引き出される。また距骨が亜脱臼するため、足を戻す際、患者の痛みの訴えとともに「カクッ」という動きを触知できる。ちなみに、外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

 

 

 

 

 

問題34 足関節外側靱帯損傷時の固定肢位はどれか。

1.底・背屈0度
2.底屈20度
3.背屈20度
4.自然下垂位

解答

解説

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

1.〇 正しい。底・背屈0度は、足関節外側靱帯損傷時の固定肢位である。この位置で固定することで、外側靱帯に過度のストレスがかかるのを防ぎ、治癒を促進することができるため。ちなみに、部分断裂の場合は約3週間、完全断裂の場合は6~8週間固定する。

2~4.× 底屈20度/背屈20度/自然下垂位は、足関節外側靱帯損傷時の固定肢位ではない。

 

 

 

 

 

問題35 下腿骨骨幹部骨折の固定で誤っているのはどれか。

1.膝関節伸展位とする。
2.腓骨頭部に綿花をあてる。
3.反張位にならないように注意する。
4.末梢循環に注意する。

解答

解説

下腿骨骨幹部骨折の介達外力

高エネルギー損傷で発生する。脛骨中下1/3内部骨析が多い(斜骨折、らせん状骨折になりやすい。横骨折は、後方凸変形となりやすい。開放骨折となりやすい。斜骨折の骨折線は前内方から後外上方へ走る。生じやすい後遺症として、①遅延治癒(偽関節)、②変形治癒:反張下腿、③神経損傷:腓骨神経麻痺(尖足位)、④筋萎縮、慢性浮腫などである。

【固定】膝関節30~40度屈曲位で行う。ギプス固定は反張位に注意する。金属副子固定は腓骨頭周囲に綿花を当てる。固定は、大腿近位部から足MP関節まで行う。

1.× 膝関節「伸展位」ではなく30~40度屈曲位とする。膝・足関節経度屈曲位、代替中央から足MP関節手前までを8~10週間固定する。

2.〇 正しい。腓骨頭部に綿花をあてる。なぜなら、腓骨神経麻痺の予防のため。腓骨頭周囲を有窓にする。

3.〇 正しい。反張位にならないように注意する。なぜなら、反張位は、骨折部に過度のストレスがかかり、治癒が遅れる可能性があるため。

4.〇 正しい。末梢循環に注意する。なぜなら、固定がきつすぎると、末梢血管が圧迫されて血流障害が起こり、組織の壊死や神経障害を引き起こすリスクがあるため。

 

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