第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午後101~105】

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問題101 18歳の男子。3週前、サッカーの試合中に右足関節を捻挫し、施術を行っていた。現在、日常生活での歩行で足関節部に疼痛や不安感はないが、運動時に踵骨隆起部の疼痛を訴えている。テーピングの写真を下に示す。
 競技復帰時に行う適切なテーピングはどれか。

1.a
2.b
3.c
4.d

答え.2

解説

MEMO

・18歳の男子。
・3週前:右足関節を捻挫
・現在:日常生活での歩行で足関節部に疼痛や不安感はない
・運動時:踵骨隆起部の疼痛あり。
→競技復帰時に行う適切なテーピングを問われている。本症例は、足関節部に疼痛や不安感はないが捻挫の再発と運動時の疼痛が主なテーピングの目的となる。したがって、再発防止運動時の踵骨隆起部の疼痛の両方にアプローチできる巻き方を選択する。

1.× a(スターアップ)は、捻挫を防止するために使用される。

2.〇 正しい。b(バスケットウェーブ)は、競技復帰時に行う適切なテーピングである。
バスケットウェーブとは、スターアップとホースシューを交互に行い編み込んで行くもので、捻挫が治りかけた場合の再発防止のためのテーピングである。

3.× c(フィギュアエイト)は、関節全体を固定する場合や伸展するのを防ぐ。

4.× d(ヒールロック)は、踵を固定するために行うものである。

巻き方の名称とその方法

アンカー(錨):はじめのアンカーは、テーピングを実施する範囲を規定する役割を持っています。最後のアンカーは、サポートとなるテープをしっかりと押さえるものです。
スターアップ:足首のみに使用され、踵の左右の動きを固定する目的で行います。縦方向にVの字や平行となるように、踵を経由して反対側の同じ高さまで巻きます。
ホースシュー:これも足首のみに使用され、足関節の横への動きを固定する目的で行います。足底と平行となるよう横方向にUの字に巻きます。(馬蹄形=ホースシュー)
サーキュラー:リング状の巻き方をいいます。部位を一周一周切りながら、少しずらして貼っていきます。各部を圧迫する時や全体を最後に覆う時に使用します。(サーキュラーの連続版。続けて螺旋状に巻く方法をスパイラルといいます。)
フィギュアエイト:8の字の形となるように巻く方法です。主に関節全体を固定する場合や伸展するのを防ぐ時に使用します。通常2回巻くようにします。
バスケットウェーブ:スターアップとホースシューを交互に行い編み込んで行くものです。
ヒールロック:踵を固定するために行うものです。内側・外側両方から脛に向かって貼っていきます。(左右のヒールロックを続けて巻く方法をアドバンスといいます)
Xサポート:補強したい靭帯の上にXのテープの重なりの部分がくるように貼ります。Xサポートの数を増やすことで、固定力・サポート力を高めることができます。
縦方向のサポート:Xサポートと同様に靭帯の補強に使用されます。通常Xサポートと同時に使用され、補強したい靭帯の真上を通るように貼ります。
コンプレッション:膝の場合に使用し、膝頭をはずして、上下に迂回するように貼っていくものです。幅の広い伸縮テープを2本に切り分けて(スプリットテープ)、膝頭の上下から圧迫し固定します。

(※引用:「巻き方の名称とその方法」吉田 泰将(慶應義塾大学体育研究所准教授))

 

 

 

 

 

問題102 70歳の女性。石につまずき、手関節を軽度背屈位・過度回内位で手を衝いた。手関節の近位2cm付近に限局性圧痛がみられ腫脹著明で、同部位の幅も著しく増大していた。
 整復後の固定肢位はどれか。

1.前腕回内位、手関節軽度掌屈位、軽度尺屈位
2.前腕回内位、手関節軽度背屈位、軽度橈屈位
3.前腕回外位、手関節軽度掌屈位、軽度橈屈位
4.前腕回外位、手関節軽度背屈位、軽度尺屈位

答え.4

解説

MEMO

・70歳の女性。
・石につまずき、手関節を軽度背屈位・過度回内位で手を衝いた。
・手関節の近位2cm付近:限局性圧痛、腫脹著明、同部位の幅も著しく増大。
→本症例は、スミス骨折が疑われる。

1.× 前腕回内位、手関節軽度掌屈位、軽度尺屈位
2.× 前腕回内位、手関節軽度背屈位、軽度橈屈位
3.× 前腕回外位、手関節軽度掌屈位、軽度橈屈位
→これら肢位は推奨されない。なぜなら、遠位骨片は、掌側・橈側・短縮・回内転位を呈しやすいため。骨片の逸脱を助長する。

4.〇 正しい。前腕回外位、手関節軽度背屈位、軽度尺屈位は、整復後の固定肢位である。
スミス骨折の固定肢位は、肘関節90°屈曲位にする。清福寺は、橈骨動脈の損傷に注意する必要がある。

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

 

 

 

 

 

問題103 31歳の男性。空手の稽古中、試し割りで板を拳で突いた際に受傷した。第2MP関節付近に強い疼痛と腫脹を認め、拳を握ると疼痛が増強する。単純エックス線写真を下に示す。
 この疾患で適切でないのはどれか。

1.転位には骨間筋と虫様筋が作用する。
2.側副靭帯を弛緩させると整復が容易になる。
3.屈曲変形が残存すると伸展障害を起こす。
4.オーバーラッピングフィンガーに注意する。

答え.2

解説

本症例のポイント

・31歳の男性。
・受傷:板を拳で突いた際。
・第2MP関節付近:強い疼痛、腫脹、拳を握ると疼痛が増強。
・単純エックス線写真:第2中手骨頸部の連続性が途絶えている。
→本症例は、第2中手骨頸部骨折が疑われる。拳の形成時に衝撃を受けることで発生することが多い骨折である。したがって、ボクサー骨折といわれることもある。第4・5中手骨の頸部に発生しやすい。中手骨の骨折は日常で良く発生し、骨折しても腫れや変形が目立ちにくいという特徴がある。

1.〇 正しい。転位には骨間筋と虫様筋が作用する。
なぜなら、骨間筋と虫様筋がまたがっているため。したがって、背側凸の変形がみられやすい。ちなみに、虫様筋の【起始】4つある。長趾屈筋の4腱から出る。第1虫様筋:第2趾腱の母趾側。第2~4虫様筋:隣り合う腱の相対する面(2頭)、【停止】第2~5趾の趾背腱膜、基節骨である。

2.× 側副靭帯を「弛緩」ではなく緊張させると整復が容易になる。
整復方法として、手関節軽度背屈、MP関節90°で、中手骨上に牽引しながら基節骨を介して遠位骨片を突き上げ、近位骨片を背側より圧迫するように行う。

3.〇 正しい。屈曲変形が残存すると伸展障害を起こす。
屈曲変形とは、関節を完全に伸ばすことができない変形のことを指す。

4.〇 正しい。オーバーラッピングフィンガーに注意する。
オーバーラッピングフィンガーとは、手の中手骨・基節骨を骨折した際に回旋転位を残してしまった時に見られる変形治癒のことをいう。

 

 

 

 

 

問題104 15歳の男子。陸上100m走でスタートと同時に左股関節に疼痛が生じた。単純エックス線写真を下に示す。
 膝屈曲位で制限される股関節運動はどれか。

1.屈曲・外転・外旋
2.屈曲・内転・内旋
3.伸展・外転・外旋
4.伸展・内転・内旋

答え.1

解説

本症例のポイント

・15歳の男子。
・陸上100m走でスタートと同時に左股関節に疼痛。
・単純エックス線写真:上前腸骨棘の骨片が転位している。
→本症例は、腸骨棘裂離骨折が疑われる。上前腸骨棘には大腿筋膜張筋、縫工筋が、下前腸骨棘には大腿直筋が付着している。これらの筋肉がキック動作など、スポーツで生ずる筋力によって骨盤付着部を急激に牽引するために、骨盤の一部が裂離(骨折)する。

1.〇 正しい。屈曲・外転・外旋は、膝屈曲位で制限される股関節運動である。
なぜなら、上前腸骨棘には大腿筋膜張筋、縫工筋が付着しているため。
大腿筋膜張筋の【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面、【作用】股関節屈曲、内旋、外転。膝関節伸展、【支配神経】上殿神経である。
縫工筋の【起始】上前腸骨棘、【停止】脛骨粗面の内側(鵞足を形成)、【作用】股関節屈曲、外転、外旋、膝関節屈曲、内旋、【神経】大腿神経である。

2.× 屈曲・内転・内旋
3.× 伸展・外転・外旋
4.× 伸展・内転・内旋
→これら股関節運動は、膝屈曲位で制限されない。

 

 

 

 

 

問題105 19歳の男性。2か月前にスノーボード滑走中に右肩を衝いて転倒した。肩関節の動きは悪かったが放置していた。症状が一向に改善しないため来所した。初検時、頚部から肩甲部にかけての自発痛があり、肩関節自動運動は屈曲90度、外転80度に制限されていた。両手で壁を押し付けさせる動作をしたところ、図のような現象がみられた。
 最も考えられるのはどれか。

1.鎖骨不全骨折
2.肩関節脱臼
3.棘上筋腱損傷
4.長胸神経麻痺

答え.4

解説

本症例のポイント

・9歳の男性。
・2か月前:右肩を衝いて転倒。
・初検時:頚部から肩甲部にかけての自発痛、肩関節自動運動は屈曲90度、外転80度に制限。
・両手で壁を押し付けさせる動作:翼状肩甲がみられる。
→本症例は、翼状肩甲がみられる。翼状肩甲とは、肩甲骨内側縁が後方に突出して鳥の翼のような形状をとることをいう。原因として、長胸神経の障害である。長胸神経支配の前鋸筋麻痺があげられる。

1.× 鎖骨不全骨折
不全骨折とは、何らかの理由により骨が連続性を完全に失わない状態の骨折を指す。いわゆる骨にヒビが入っている状態である亀裂骨折や、緻密層以下の部分が離断しているにも関わらず骨膜に損傷がないため、外形的には変化が見られない骨膜下骨折などがこの不全骨折の典型例である。

2.× 肩関節脱臼
肩関節脱臼により、外観として脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

3.× 棘上筋腱損傷
棘上筋腱損傷の場合、肩関節外転の初動が障害されやすい。本症例のように、肩関節外転60°まで可能なことは少ない。ちなみに、棘上筋の【起始】肩甲骨の棘上窩、棘上筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の上部、【作用】肩関節外転、【支配神経】肩甲上神経:C5,C6である。

4.〇 正しい。長胸神経麻痺が最も考えられる。
本症例は、翼状肩甲がみられる。翼状肩甲とは、肩甲骨内側縁が後方に突出して鳥の翼のような形状をとることをいう。原因として、長胸神経の障害である。長胸神経支配の前鋸筋麻痺があげられる。

 

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