第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後146~150】

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問題146 次の文で示す病証に対する治療方針で最も適切なのはどれか。
 「22歳の女性。主訴は月経痛。経血量は少なく、血塊が混じることがある。小腹部の冷痛と拒按がみられ、足が冷える。舌根に白厚苔、脈は沈遅を認める。」

1.肝鬱を抑える。
2.寒邪を除く。
3.脾の統血を促す。
4.肝腎の精血を補う。

解答

解説

本症例のポイント

・22歳の女性(主訴:月経痛)
・経血量は少なく、血塊が混じることがある。
・小腹部の冷痛と拒按がみられ、足が冷える
・舌根に白厚苔、脈は沈遅を認める。
→本症例は、寒邪による血瘀がみられる。手足厥冷:自覚的・他覚的に手足の冷えを感じるもので、陽虚、気滞、瘀血などでみられる。白苔は、健康、表証(薄白苔)、寒証(厚白苔)による。厚苔は、痰湿、食滞による。ちなみに、遅脈(寒証)は、脈拍が遅く、1呼吸に3拍以下のものである。

1.× 肝鬱を抑える。
肝鬱気滞は、精神抑鬱、急躁、易怒、胸肋部痛、脈弦、梅核気などがみられる。

2.〇 正しい。寒邪を除く
寒邪は、陰性の邪気で寒冷性、凝滞性、収引性があり、陽気を損傷しやすい。

3.× 脾の統血を促す。
統血は、血が脈中から漏れ出るのを防ぐ。これを気の固摂作用という。

4.× 肝腎の精血を補う。
精血不足とは、腎の中に貯蔵されている精(=腎精)と、肝に貯蔵されている血(肝血≒血液)が不足しているという意味である。血が不足している状態のことで、血行が悪くなり、全身に栄養が行き渡らなくなるため、貧血気味になったり、めまい、しびれ、けいれんなどの症状が現れやすくなる。また、肌がカサカサしたり、抜け毛や白髪が増える傾向もある。

 

 

 

 

 

問題147 次の文で示す病証に対する治療穴で最も適切なのはどれか。
 「33歳の男性。主訴は上腹部の不快感。連日、飲食の不摂生が続き、悪心、嘔吐がみられる。腹部膨満、噯気、口臭を伴う。舌は厚苔、脈は滑実を認める。」

1.膻中
2.梁門
3.帯脈
4.肓兪

解答

解説

本症例のポイント

・33歳の男性(主訴:上腹部の不快感)。
・連日、飲食の不摂生が続き、悪心、嘔吐がみられる。
・腹部膨満、噯気、口臭を伴う。
・舌は厚苔、脈は滑実を認める。
→本症例は、の病証の食滞胃脘が疑われる。食滞胃脘は、腹部脹痛、噯気、悪心嘔吐、拒按、便秘、失気の回数増、脈弦滑などである。滑脈(痰湿、食滞)は、脈の流れが滑らかで、円滑に指に触れるもの。厚苔は、痰湿、食滞を疑う。

1.× 膻中は、任脈である。
膻中(※読み:だんちゅう)は、前胸部、前正中線上、第4肋間と同じ高さに位置する。

2.〇 正しい。梁門は、病証に対する治療穴である。
本症例は、の病証の食滞胃脘が疑われるため、足の陽明経である梁門を治療穴とする。梁門(※読み:りょうもん)は、上腹部、腈中央の上方4寸、前正中線の外方2寸に位置する。

3.× 帯脈は、足の少陽経である。
帯脈(※読み:たいみゃく)は、側腹部、第11肋骨端下方、臍中央と同じ高さに位置する。

4.× 肓兪は、足の少陰経である。
肓兪(※読み:こうゆ)は、上腹部、臍中央の外方5分に位置する。

 

 

 

 

 

問題148 次の文で示す病証で最も適切なのはどれか。
 「58歳の女性。昨夜から陰部掻痒感を自覚。最近イライラすることが多く、飲酒量が増えた。舌辺に黄厚膩苔、脈は左関上の浮数滑を認める。」

1.胃陰虚
2.胃熱
3.肝経湿熱
4.肝陽上亢

解答

解説

本症例のポイント

・58歳の女性。
・昨夜:陰部掻痒感を自覚。
・最近:イライラすることが多く、飲酒量が増えた。
・舌辺に黄厚膩苔、脈は左関上浮数滑を認める。
→本症例は、肝胆湿熱が疑われる。なぜなら、脈は左関上であり、肝の病証であると疑われるため。肝胆湿熱は、口苦、黄疸、脇痛、身熱、眩暈、耳鳴、舌質紅、舌苔膩、脈滑などである。脾虚などによる内湿が熱化して生じる。ちなみに、黄苔は熱証を、膩苔・腐苔は痰湿の停滞、食滞が該当する。また、浮脈(表証、虚証)は、軽く指を当てると拍動が感じられ、按じると感じ方が弱くなる、もしくは感じられなくなるもの。滑脈(痰湿、食滞)は、脈の流れが滑らかで、円滑に指に触れるものを指す。

1.× 胃陰虚
胃の病証である胃陰虚は、食少、乾嘔、舌質紅絳、舌苔無などがあげられる。また、陰虚・内熱・気逆なども。陰虚に対し、陰を補う必要がある。

2.× 胃熱
胃の病証である胃熱は、胃胱部灼熱痛、呑酸、嘈雑、口臭、便秘、歯肉炎などがあげられる。

3.〇 正しい。肝経湿熱は、文で示す病証である。
肝の病証である肝胆湿熱は、口苦、黄疸、脇痛、身熱、眩暈、耳鳴、舌質紅、舌苔膩、脈滑などである。脾虚などによる内湿が熱化して生じる。

4.× 肝陽上亢
肝の病証である肝陽上亢は、眩暈、耳鳴、頭痛、目赤、陰虚によるほてり・のぼせ、腰膝酸軟などである。本症例の症状と合致しない。

六部定位脈診

【部位】
①左:浮・沈
寸:小腸・心
関:胆・肝
尺:膀胱・腎

②右:浮・沈
寸:大腸・肺
関:胃・脾
尺:三焦・心包

 

 

 

 

 

問題149 次の文で示す病証に対する治療穴で最も適切なのはどれか。
 「46歳の女性。昨晩急なめまい発作があった。最近怒りっぽくなり、胸脇部の張り感がある。脈は弦を認める。」

1.地機
2.中都
3.水泉
4.金門

解答

解説

本症例のポイント

・46歳の女性。
・昨晩:急なめまい発作があった。
・最近:怒りっぽくなり、胸脇部の張り感がある。
・脈はを認める。
→本症例は、肝火上炎が疑われる。肝火上炎は、頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅、脈弦数などである。ちなみに、弦脈(肝胆病、痛証、痰飲)は、琴の弦に触れたような、長く真っすぐで緊張したものである。原穴は、臓腑の病、郄穴は急性症状、絡穴は慢性症状に用いられる。本症例は急なめまいである(急性症状)ため、郄穴を用いるのが望ましい。

1.× 地機は、の郄穴である。
地機(※読み:ちき):下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、陰陵泉の下方3寸

2.〇 正しい。中都は、文で示す病証に対する治療穴である。
中都は、肝の郄穴である。
中都(※読み:ちゅうと):下腿前内側、脛骨内側面の中央、内果尖の上方7寸

3.× 水泉は、の郄穴である。
水泉(※読み:すいせん):足内側、太渓の下方1寸、踵骨隆起前方の陥凹部

4.× 金門は、膀胱の郄穴である。
金門(※読み:きんもん):足背、外果前縁の遠位、第5中足骨粗面の後方、立方骨下方の陥凹部

 

 

 

 

 

問題150 次の文で示す病証に対する経脈を考慮した治療穴として適切なのはどれか。
 「65歳の男性。2日前に新型コロナワクチン接種を受けたところ、肩を外転すると強い痛みを自覚する。悪寒、発熱、頭痛はない。肩の屈曲、伸展痛もない。」

1.魚際
2.天泉
3.液門
4.前谷

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の男性(2日前:新型コロナワクチン接種)
肩を外転すると強い痛みを自覚。
・悪寒、発熱、頭痛はない。
・肩の屈曲、伸展痛もない。
→肩関節外転痛は三焦経脈を対象とする。ちなみに、屈曲痛であれば肺経を、伸展時痛であれば小腸経を対象とする。

1.× 魚際は、肺経の栄穴である。
魚際(※読み:ぎょさい)は、手掌、第1中手骨中点の橈側、赤白肉際に位置する。

2.× 天泉は、手の厥陰心包経である。
上腕二頭筋の治療穴でもある。天泉(※読み:てんせん)は、上腕前面、上腕二頭筋長頭と短頭の間、腋窩横紋前端の下方2寸に位置する。上腕二頭筋の治療穴はほかにも、天府、侠白、尺沢(肺)、臂臑(大腸)、青霊(心)、曲沢(心包)があげられる。

3.〇 正しい。液門は、文で示す病証に対する経脈を考慮した治療穴である。
なぜなら、液門は、手の少陽三焦経で、三焦の栄穴であるため。液門(※読み:えきもん)は、手背、薬指と小指の間、みずかきの近位陥凹部、赤白肉際に位置する。

4.× 前谷は、手の太陽小腸経の小腸で栄穴である。
前谷(※読み:ぜんこつ)は、小指、第5中手指節関節尺側の遠位陥凹部、赤白肉際に位置する。

 

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