第32回(R6年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前41~45】

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問題41 大動脈弁の音がよく聴取されるのはどれか。

1.第2肋間胸骨右縁
2.第2肋間胸骨左縁
3.第3肋間胸骨左縁
4.第4肋間胸骨左縁

解答

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)


1.〇 正しい。第2肋間胸骨右縁は、大動脈弁の音がよく聴取される。なぜなら、大動脈弁は心臓の右側に位置しているため。この部位では、Ⅱ音(特に大動脈弁閉鎖音)が大きく聴取できる。

2.× 第2肋間胸骨左縁は、肺動脈弁の聴診点である。この部位では、Ⅱ音(特に肺動脈閉鎖音)が大きく聴取できる。

3.× 第3肋間胸骨左縁は、エルブ領域(Erb領域)である。Ⅰ音(僧帽弁と三尖弁の閉鎖音)とⅡ音(大動脈弁と肺動脈弁の閉鎖音)が同じ音量で聴取できる位置である。

4.× 第4肋間胸骨左縁は、三尖弁の聴診点である。

心音について

正常心音は、Ⅰ〜Ⅳ音に分類されるが、健康成人ではⅠ音とⅡ音しか確認できないことが多い。

Ⅰ音(心室収縮時に起きる音:おもに僧帽弁閉鎖音、大動脈弁開放音)
Ⅱ音(心室拡張の始まりに起きる音:おもに大動脈弁閉鎖音(ⅡA)と肺動脈弁閉鎖音(ⅡP))
Ⅲ音(心室拡張期の終わり:心室筋の伸展による音)
Ⅳ音(心房収縮音:Ⅰ音の直前)

 

 

 

 

 

問題42 呼吸音が減弱するのはどれか。

1.無気肺
2.気管支炎
3.肺線維症
4.気管支肺炎

解答

解説

肺呼吸音が減弱する原因

呼吸音の減弱は、気道内の空気の移動の減少を示している。したがって、喘息およびCOPDで気管支攣縮またはその他の機序により気流が制限されるような場合に生じる。呼吸音は、胸水、気胸、または気管支内の閉塞性病変が存在する場合にも減弱しうる。

1.〇 正しい。無気肺は、呼吸音が減弱する。無気肺とは、気管支の閉塞などによって肺内の空気の出入りがなくなり、空気が抜けてしまった状態である。原因としては、肺門部の扁平上皮がんなどの原発性肺がん、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の粘液栓による気道の閉塞や気道異物などがあげられる。

2.× 気管支炎は、呼吸音が増強する。気管支炎とは、ウイルスや細菌などにより、空気を肺に送る気管支を中心に炎症が引き起こされる病気の総称である。気管支炎はさまざまな原因により生じるが、原因の多くはウイルスによる感染症である。そのほかの原因としては細菌などによる感染症、アレルギー、喫煙・大気汚染・化学物質などが挙げられる。

3.× 肺線維症は、呼吸音の強弱は変化しにくい。ただし、細かい捻髪音が聞こえる。肺線維症とは、肺胞の周りの間質の壁が炎症により厚くなり、線維化している状態のことである。原因としては、職業上の粉塵吸入やペット飼育などの住環境、薬剤や健康食品(薬剤性肺障害)、関節リウマチ他の膠原病などさまざまなものが考えられる。人工呼吸器管理とは関連しない。

4.× 気管支肺炎は、呼吸音が増強する。気管支肺炎とは、気管支の炎症を伴う肺炎の一形態である。せき・痰の症状が最初からみられ、発熱が加わってくる場合が多い傾向がある。

 

 

 

 

 

問題43 放射線被曝を伴わない検査はどれか。

1.PET検査
2.CT検査
3.MRI検査
4.シンチグラフィ検査

解答

解説
1.× PET検査(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)は、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種である。放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化する。PET検査は、通常がんや炎症の病巣を調べたり、腫瘍の大きさや場所の特定、良性・悪性の区別、転移状況や治療効果の判定、再発の診断などに利用されている。アルツハイマー病やてんかん、心筋梗塞を調べるのにも使われている。

2.× CT検査とは、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。エックス線を使用した撮影である。

3.〇 正しい。MRI検査は、放射線被曝を伴わない検査である。核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。つまり、磁場と電波を使用して体内の情報を画像化し撮影する検査である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

4.× シンチグラフィ検査とは、体内に投与した放射性同位体から放出される放射線を検出し、その分布を画像化したものである。

MRI検査とは?

核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

【MRI検査の禁忌】
①体内の電子電機部品(ペースメーカ、移植蝸牛刺激装置(人工内耳)、植込み型除細動器、神経刺激器、植込み型プログラマブル注入ポンプ):MRI対応型もあるためしっかり確認する。
②素材の確認できない脳動脈クリップ:MRI対応型もあるためしっかり確認する。
③目や脳など特定の重要臓器に迷入した鉄片などの強磁性体の破片
④眼部のインプラントや材料で強磁性金属を使用しているもの
⑤磁場によって活性化するもの(磁力で装着する義眼、磁石部分が脱着不能な義歯など)
⑥目のメークアップ用品、カラーコンタクト
⑦入れ墨
⑧補聴器
⑨いくつかの管腔内デバイス
⑩ニトログリセリン真皮浸透絆創膏

 

 

 

 

 

問題44 縦隔腫瘍でみられるのはどれか。

1.眼振
2.ベル現象
3.眼球突出
4.ホルネル症候群

解答

解説

縦隔腫瘍とは?

縦隔とは、左右の肺と胸椎・胸骨に囲まれた部分を指す。手術部位である心臓や大血管の周囲に感染を発症し、膿が貯留する。それらの臓器に由来してできる腫瘍を「縦隔腫瘍」といい、①上縦隔、②前縦隔、③中縦隔、④後縦隔の4つの区画に分けられる。

【それぞれの区画ごとにできやすい腫瘍】
①上縦隔:甲状腺腫など
②前縦隔:胸腺腫、胸腺がん、胸腺のう胞、奇形腫、胚細胞腫瘍など
③中縦隔:悪性リンパ腫、心膜のう胞、気管支のう胞など
④後縦隔:神経鞘腫など

1.× 眼振とは、自分の意思とは関係なく眼球が動く現象である。小脳性平衡機能障害に最も関連する異常である。

2.× ベル現象とは、閉眼した時、眼球が上転する現象のことである。Bell麻痺は、単純ヘルペスウイルスが関与し、特発性の末梢性顔面神経麻痺のことである。他の麻痺(中枢性、感染によるRamsay-Hunt症候群、外傷、中耳炎、腫瘍など)を除いたものをさす。顔の片側の筋肉に起こる突然の筋力低下または麻痺がおこる。

3.× 眼球突出は、バセドウ病の症状である。バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。

4.〇 正しい。ホルネル症候群は、縦隔腫瘍でみられる。なぜなら、縦隔腫瘍が交感神経節を圧迫するため。ホルネル(ホルナー)症候群とは、交感神経遠心路の障害によって生じる。三大徴候:中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)とする症候群である。眼の徴候以外は、顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする。

ホルネル(ホルナー)症候群

 交感神経遠心路の障害によって生じる。三大徴候:中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)とする症候群である。眼の徴候以外は、顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする。

交感神経遠心路には、3つのニューロンがあり、そのいずれが障害されても発症する。交感神経遠心路は、①視床下部→脳幹→脊髄毛様脊髄中枢に至る。その後、②節前ニューロンは、肺尖部を通り上行し,上頸部交感神経節で終わる。③節後ニューロンは、顔面の血管、発汗神経は外頸動脈に沿って走り、一方眼瞼、眼球へのそれは内頸動脈に沿って頭蓋内にもどり各効果器を支配する。

 ①の領域の障害の代表例は、Wallenberg症候群。
 ②の領域の障害は、直接の外傷、頸胸部リンパ腺腫大による圧迫、腫大した甲状腺の圧迫、頸部胸部動脈瘤、癌の転移、頸部膿瘍の圧迫、肺尖部肋膜癒着などにより生じる。
 ③の領域の障害は、内頸動脈系の動脈瘤、閉塞などにより生じる。

 

 

 

 

 

問題45 意識障害で、周囲に対する認識の減退や不安・興奮状態がみられるのはどれか。

1.傾眠
2.昏迷
3.せん妄
4.無欲状態

解答

解説

意識レベルの明瞭度

①明識困難状態とは、ごく軽い意識混濁。外界の認知は保たれているが、正常よりやや不活発でぼんやりしている。
②昏蒙とは、軽度の意識混濁。覚醒はしているが、精神活動は浅い眠りに近い状態。外界の認知に混乱が生じ、見当識が障害される。
③傾眠とは、放置すれば眠りに落ちてしまうような状態。刺激されれば容易に覚醒し、短時間なら合目的的な行動もできる。
④嗜眠とは、傾眠よりやや強い意識混濁。強く刺激すれば覚醒し、食事のような合目的的行動も可能。
⑤昏迷とは、中等度の意識混濁。閉眼、横臥し、強い刺激をしなければ覚醒しない。眼球運動も少なくなり失禁がみられる。強い刺激に反応しても発語ははっきりしない。見当識は失われ、健忘が残る。
⑥昏睡とは、重篤な意識混濁。強い刺激に対してもほとんど反応がない。自発運動はなく、深部腱反射・対光反射なども減弱ないし消失する。筋緊張が緩み、失禁状態となる。除脳硬直が起こることもある。呼吸、循環、体温調節などの植物機能にも変化が起こる。

1.× 傾眠とは、放置すれば眠りに落ちてしまうような状態。刺激されれば容易に覚醒し、短時間なら合目的的な行動もできる。

2.× 昏迷とは、中等度の意識混濁。閉眼、横臥し、強い刺激をしなければ覚醒しない。眼球運動も少なくなり失禁がみられる。強い刺激に反応しても発語ははっきりしない。見当識は失われ、健忘が残る。

3.〇 正しい。せん妄は、意識障害で、周囲に対する認識の減退や不安・興奮状態がみられる。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。

4.× 無欲状態は、うつ病にみられる症状である。無欲状態は、感情や興味、欲望の喪失を特徴とする精神状態である。ちなみに、うつ病とは、抑うつ感、希望や元気を失ったり、興味を失ったり、生産性が低下したり、睡眠障害、食欲の低下、身体症状などが2週間以上続いている状態である。原因は多岐にわたり、生物学的、環境的、社会的要因が関係していることが知られている。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

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